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平成30(2018)年度「都立高一般入試」まるわかり③ 〜 国語の問題分析、傾向と対策

平成30(2018)年度「都立高一般入試」まるわかり③ 〜 国語の問題分析、傾向と対策
2月23日、都立高校の一般入試(学力検査に基づく選抜)が実施されました。
果たして今年の入試はどうだったのか? 受け終えた受検者はもちろん、来年に受検する予定の中学2年生のみなさんも大いに気になることでしょう。
そこで、School Postでは都立高校一般入試まるわかり」企画をお送りしています。第3弾となる本記事では、国語の入試問題を分析、傾向と対策をわかりやすく解説します。都立高校を目指す方は必読の内容です。
※ 本記事は2018年2月23日当時の公式発表をはじめとする情報に基づいたものです。
石井 知哉(いしい ともや)

執筆

石井 知哉(いしい ともや)

全体の概要

2教科目に実施されました。試験時間は9:00〜9:50の50分間です。

満点は100点です。全体の問題構成・配点は次の通りです。

  • 大問1:漢字の読み【全5問・計10点】
  • 大問2:漢字の書き【全5問・計10点】
  • 大問3:物語文の読解【全5問・計25点】
  • 大問4:論説文の読解【全5問・計30点】
  • 大問5:古典鑑賞文の読解【全5問・計25点】

例年と大きな変化はありません。

解答形式で見ると、

大問1:漢字の読み

記述で解答する問題が全5題です。1問2点で合計10点です。

  • (1) 繕う→つくろう〔記述・2点〕
  • (2) 舞踊→ぶよう〔記述・2点〕
  • (3) 若干→じゃっかん〔記述・2点〕
  • (4) 惜敗→せきはい〔記述・2点〕
  • (5) 紛れて→まぎれて〔記述・2点〕

いずれも中学校の教科書レベルの漢字ですが、
(2) 舞踊→○:ぶよう ×:ぶとう(舞踏)
(4) 惜敗→○:せきはい ×:ざんぱい(惨敗)
など、紛らわしいものもあり、今年度はやや難しかったかもしれません

細かい違いや言葉の意味を意識して勉強することがいかに大切かがよくわかる問題でした。

大問2:漢字の書き

記述で解答する問題が全5題です。1問2点で合計10点です。

  • (1) ヒロう→拾う〔記述・2点〕
  • (2) キョウリ→郷里〔記述・2点〕
  • (3) キンム→勤務〔記述・2点〕
  • (4) チュウサイ→仲裁〔記述・2点〕
  • (5) イキオい→勢い〔記述・2点〕

こちらは小学校で学習するレベルのものもあり、比較的解きやすかったと思います。強いて言えば、「郷里」や「仲裁」などは、中学生が日常生活で使う機会が余り多くはないため、出てこなかった受検者も多かったのではないでしょうか。

大問3:物語文の読解

出典は『辞書に書かれたもの』(澤西祐典著)によるものです。4択の記号をマークで解答する問題が全5題です。1問5点で合計25点です。

  • 問1:主人公の行動のわけを問うもの〔マーク・5点〕
  • 問2:表現の特徴を問うもの〔マーク・5点〕
  • 問3:主人公の様子を問うもの〔マーク・5点〕
  • 問4:主人公の行動のわけを問うもの〔マーク・5点〕
  • 問5:主人公の気持ちを問うもの〔マーク・5点〕

出題の内容としては目新しいものはなく、例年と同傾向です。しかし、今年度は選択肢がかなり作り込まれているため、難易度の高い問題といえます

不正解の選択肢と正解の選択肢の内容の差が小さいので、本文を正確に読んだ上で、選択肢の各部分との照らし合わせを丁寧に行い、消去していかないと正解にたどりつけません。受験生の多くが普段から消去法を使って解いていると思いますが、「4つのうち2つまでは絞り込めたものの、残り2つから正解選択肢を選べなかった」ということもあったのではないでしょうか。ましてや、「直感で答える」という解答方法に頼っていては歯が立たず、全問不正解ということもあり得ます。

大問4:論説文の読解

出典は『中動態の世界』(國分功一郎著)によるものです。問1〜4は4択の記号をマークで解答する問題で1問5点。問5は200字作文で10点。合計25点です。

  • 問1:筆者の主張の理由を問うもの〔マーク・5点〕
  • 問2:筆者の主張の内容を問うもの〔マーク・5点〕
  • 問3:第12段落の役割を問うもの〔マーク・5点〕
  • 問4:筆者の主張の理由を問うもの〔マーク・5点〕
  • 問5:200字作文〔記述・10点〕

出題の内容は例年と同傾向です。不正解選択肢の消去しやすさも例年通りで、難易度は例年並みです。ただし、本文が「意志とは何か」という抽象的で哲学的なテーマであるため、こうした内容の文章を読み慣れていない受検者にとっては、難しい問題でした。逆に、「この文章が面白かった」と言った受検者は全問正解でした。それだけ正確に内容をとらえられていたということでしょう。

問5の200字作文は、本文の内容を踏まえ「自分の意志をもつこと」というテーマで自分の意見を述べるものです。「具体的な体験や見聞も含めて」という条件は例年通りですが、テーマにある「意志」については、注意が必要です。筆者が本文で述べている「意志」の定義に沿わずに書くと、減点となります。

大問5:古典鑑賞文の読解

出典は『漢詩は人生の教科書』(陳舜臣、石川忠久著)と『漱石の漢詩』(和田利男)によるものです。問1〜4は4択の記号をマークで解答する問題で1問5点。問5は200字作文で10点。合計25点です。

  • 問1:修飾・被修飾の関係を問うもの〔マーク・5点〕
  • 問2:発言の内容を問うもの〔マーク・5点〕
  • 問3:発言の対談における役割を問うもの〔マーク・5点〕
  • 問4:漢詩の評価についての説明を問うもの〔マーク・5点〕
  • 問5:漢詩の現代語訳に相当する箇所を問うもの〔マーク・5点〕

問1で文法が問われていますが、その他は設問は例年と同傾向です。引用されている漢詩についても現代語訳が示されており、「世間のイメージほど古典らしくはない」というのも毎年の流れそのままです。今年度は本文の内容もわかりやすく分量も多くはないので、理解しやすいものだったと思います。また、各設問も本文中から根拠を見つけやすく、かつ不正解選択肢を消去しやすいものでした。総じて、正解を出しやすく、高得点を見込める問題といえます

もっとも、大問1から順に解き進めていくと、大問4までに時間を使い過ぎることがあります。この場合、大問5に充分な時間を使うことができないため、せっかく得点しやすい問題なのに失点するおそれがあります。実際、数問を空欄で終えてしまった受検者もいたようですし、時間配分にはくれぐれも要注意です。

2018年度国語の総括

まとめると、今年度の都立高校一般入試の国語の問題の難易度は、次のようになります。

  • 大問1:漢字の読み…やや難
  • 大問2:漢字の書き…標準
  • 大問3:物語文の読解…
  • 大問4:論説文の読解…標準
  • 大問5:古典鑑賞文の読解…やや易

全体としてはやや難化したといえます。

マークシート導入に伴い、10点分が記述からマークに変わり得点しやすくなったため、平成28年以降、受検者平均点が70点超えもしくは70点近くまで上がりましたが、今年度は難化により、60点台前半から65点前後に落ち着くものと思われます。

2019年度以降の受検予定者は、何をすればいい?

2019年以降の入試に向けて、1・2年生のうちからすべきこと・できることはたくさんあります。

まず、何よりも力を入れたいのは読解です。約70点分が読解問題なのですから、いかに重大かはよくわかりますよね。中学校の定期テストと異なり、初めて読む文章からの出題ですから、限られた時間内で速く正確に内容を理解する力が求められます。

読解力の強化のためには、精読(1文・1段落ずつ噛み砕きながら丁寧に読む)と速読(素速く読む)を繰り返すことをおすすめします。素材は教科書の文章でも構いませんし、読解用の問題集の文章でも構いません。理想は、小説、説明文、論説文、随筆など、様々なジャンルをバランス良く読むことです。読みながら語彙力も増やせます。もちろん、日頃から読書をたくさんしていると有利なのは間違いありません。

読解問題の正解には、必ず本文中に根拠がありますから、解答の根拠を明らかにすることを心がけましょう。記号で選ぶ問題ならば、選択肢の1つ1つを本文と照らし合わせて、消去法を用いて正解を出します。時間がかかっても構いません。1・2年生のうちは、「正しい型」を身につけることが最優先です。スピードアップは3年生になってからでも充分間に合います。

漢字も読み・書き合わせて20点ですから、軽視はできません。1・2年生のうちから、教科書に掲載されている漢字から「読めないもの」「書けないもの」をなくす練習を続けていれば、自然と漢字は覚えていきます。その際、漢字の意味も合わせて覚えると、より記憶が強化されます。

作文については3年生の夏からで間に合いますし、文法も1・2年生で学習する基本レベルの問題が出題されるので、慌てる必要は一切ありません。

以上から、1・2年生がすべきことは、読解と漢字です。力が付くのに時間がかかり、配点に高いこの2つを強化するのが最優先です。都立高校合格を勝ち取るためには、先手必勝が最高の戦略です。「今できること」を日々コツコツを積み重ねていくことが、1年後、2年後に確実にプラスになります。

「都立高校一般入試まるわかり」企画・第3弾はいかがでしたでしょうか。第4弾は数学の問題分析、傾向と対策を解説します。どうぞお楽しみに!

石井 知哉(いしい ともや)

執筆

石井 知哉(いしい ともや)