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平成30(2018)年度「都立高一般入試」まるわかり① 〜 受検動向

平成30(2018)年度「都立高一般入試」まるわかり① 〜 受検動向
2月23日、都立高校の一般入試(学力検査に基づく選抜)が実施されました。
果たして今年の入試はどうだったのか? 受け終えた受検者はもちろん、来年に受検する予定の中学2年生のみなさんも大いに気になることでしょう。
そこで、「都立高校一般入試まるわかり」企画を本日からお送りします。第1弾となる本記事では、今年度の受検動向を徹底分析、わかりやすく解説します。都立高校を目指す方は必読の内容です。
※ 本記事は2018年2月23日当時の公式発表をはじめとする情報に基づいたものです。
石井 知哉(いしい ともや)

執筆

石井 知哉(いしい ともや)

受検状況は?

【全日制高校】(↑は前年比アップ。↓は前年比ダウン。カッコ内は2017年度の数値)

  • 応募者数45,050人↓(47,975人)
  • 受検者数42,719人↓(45,509人)
  • 不受検者数2,331人↓(2,466人)
  • 棄権率:5.2%↑(5.1%)

応募者・受検者が大幅に減少しました(前年比約3,000人減)。2014年以降、応募者数はずっと47,000人台で推移してきましたから、今年は都立高校の志望者が大幅に減ったわけです。

子どもの数自体が減っているとはいえ、中学3年生の減少数は2017年に比べてせいぜい900名程度です(東京都総務局統計部人口統計課「学校基本統計」による)。高校進学率が突然下がるはずもなく、また、他県の公立高校への進学希望者が急激に増えたとも思えません。

となれば、考えられることは1つしかなく、私立高校の志望者が増えたことが主な要因でしょう。その背景には、2017年から始まった東京都の「私立高校授業料実質無償化」政策があると推察されます。2009年に国の政策で公立高校の授業料が無償化され、それ以降、都立人気が加速し、私立高校は軒並み生徒募集に苦戦してきました。しかし、今回の東京都の政策により、都立高と私立高の間で学費面での差が縮まりました。これにより、受験生にとっては選択の幅が広がり、私立高の志望者が増えたと考えることができます。

なお、「出願はしたが学力検査は棄権して受けなかった」という不受検者数棄権率(「不受検者数÷応募者数」で算出したもの)は例年と大きく変わってはいません。

倍率は?

【受検倍率】(↑は前年比アップ。↓は前年比ダウン。カッコ内は2017年度の数値)

  • 全日制合計1.36倍↓(1.43倍)
  • 普通科男子1.43倍↓(1.46倍)
  • 普通科女子1.51倍↓(1.52倍)
  • 単位制普通科1.30倍↓(1.45倍)
  • コース制1.27倍↓(1.51倍)
  • 専門学科1.07倍↓(1.26倍)
  • 総合学科1.16倍↓(1.35倍)

まず、全日制高校全体の倍率は下がりました。普通科は男子が微減、女子がほぼ横ばいで、2017年度と同程度の倍率です。しかし、2倍を超える(受検者の半数以上が不合格となる)高倍率校もあれば、定員割れ(応募者数が募集人数に満たない)で全入となる高校もあるように、学校ごとの差が激しくなっています。

次に、単位制普通科コース制専門学科総合学科では、倍率が大きく下がっているのが特徴的です。

専門学科においては、

  • 商業科0.95倍↓(1.14倍)
  • ビジネスコミュニケーション科0.91倍↓(1.28倍)
  • 工業科1.02倍↓(1.20倍)
  • 科学技術科1.25倍↓(1.41倍)
  • 農業科1.25倍↓(1.35倍)
  • 家庭科1.29倍↓(1.48倍)
  • 福祉科1.12倍↓(1.28倍)
  • 体育科1.24倍↓(1.38倍)
  • 国際科2.02倍↑(1.90倍)
  • 芸術科2.07倍↓(2.09倍)
  • 産業科1.08倍↓(1.49倍)

このように軒並み下がっていますが、他方で、国際科や芸術科など2倍を超える難関となっている科もあります(設置している高校自体が少なく、募集人数が多くないということも高倍率の要因ではありますが)。こう見ると、「実学離れ」の風潮も見て取ることができます。

このような動向の背景を考察すると、やはり大学受験が第1に挙げられます。今年度の高校受験生は2020年に高3となり、大学入試を「新テスト」で迎える最初の世代です。未知の入試になるため、何をどう対策したら良いのか、不安になるのは想像に難くありません。したがって、受験生や保護者には、幅広く対応が可能な高校を選びたいという心理がはたらき、それが普通科人気につながったものと思われます。

各高校の詳細についてはこちら
(東京都教育委員会のホームページに移動します)

2019年度以降はどうなる?

今年度の入試においては、「私立高校授業料実質無償化」政策が都立高の募集状況に影響を及ぼしたと見て差し支えありません。それでは、来年度以降はどうなるのでしょうか?

まず、この政策が継続する限りは、学費面より、純粋に教育内容の面で高校を選ぶ傾向は強まると予想されます。私立高校もPRを強めるでしょうし、この政策の認知がより一層高まることになります。これにより、経済的な理由で私立高進学を断念していた家庭をはじめとして、全体として都立高から私立高に人気がシフトする流れがしばらくは続くことでしょう。今後も都立高全体の倍率は今年度並で推移すると予想されます

また、少子化で中学生の絶対数が減っているのですから、高校間での競争が激しくなることも容易に想像できます。校風、カリキュラム、教員の質・人員、学校設備など、より良い教育を受けられる環境を選べるので、高校進学を目指す中学生にとっては好ましい傾向です。

今年度、都立高から私立高へと志望者が流れましたが、都立高普通科の倍率に大きな変わりはなく、専門学科や総合学科がその余波を受けた形です。普通科高校でも、倍率2倍を超える難関校もあれば、倍率1倍未満の全入校もあり、まさしく「明暗くっきり」となりました。

一時期は、「高倍率の翌年は下がり、低倍率の翌年は上がる」という「倍率のリバウンド」とでも呼ぶべき現象がしばしば見られました。もちろん、現在でもその傾向が消えてはいませんが、他方で、「高倍率校はずっと高倍率、低倍率高はずっと低倍率」という「倍率の連鎖」が続くことも生じています。特徴を明確に打ち出し、受験生が魅力的だと思うような学校づくりをできている高校は高い人気を保ち続けるでしょう。逆に、定員割れをするような低倍率が続く都立高では、募集人数の削減や科・コースの統廃合が進むこともあり得ます。

このように、人気が人気を呼び、不人気が不人気を呼ぶような面があるのも事実です。しかし、倍率や人気はそん学校に対する世間的な評価に過ぎません。倍率が低くても中身が良い学校はたくさんありますし、逆もまたしかりです。実際に高倍率の都立高校の生徒に質問してみると、「なぜそんなに人気があるのかよくわからない」というコメントが返ってくることもよくあります。

「選ばなければ誰でも高校に入れる時代」になっています。受験生や保護者は、自分の目で高校を見て、自分で考えて選択・決断しなければいけません

今後の入試日程は?

今後のスケジュールは以下の通りです。手続きをしなければ入学できませんから、合格しても決して気を抜けません。

【分割前期募集・第1次募集】

  • 3月1日(木):合格発表
  • 3月1日(木)・2日(金):入学手続

3月1日の合格発表で惜しくも不合格となり、分割後期募集・第2次募集にチャレンジするのであれば、以下の日程での実施となります。

【分割後期募集・第2次募集】

  • 3月6日(火):入学願書受付
  • 3月7日(水):入学願書取り下げ
  • 3月8日(木):入学願書再提出
  • 3月9日(火):学力検査
  • 3月15日(木):合格発表
  • 3月15日(木)・16日(金):入学手続

「都立高校一般入試まるわかり」企画・第1弾はいかがでしたでしょうか。第2弾からは今年度の問題についてお伝えしてまいります。どうぞお楽しみに!

石井 知哉(いしい ともや)

執筆

石井 知哉(いしい ともや)