都立高校一般入試「国語」の過去問から導いた傾向と対策
執筆
石井 知哉(いしい ともや)
都立高校一般入試・国語の平均点推移
都立高校一般入試の国語の受検者平均点は、平成20年度以降、次のように推移しています。
- 平成20年度:63.8点
- 平成21年度:69.0点
- 平成22年度:60.9点
- 平成23年度:65.9点
- 平成24年度:69.5点
- 平成25年度:60.5点
- 平成26年度:61.6点
- 平成27年度:65.6点
- 平成28年度:73.9点
- 平成29年度:69.5点
平成21年、24年が70点近い点数であったほか、過去10年間はずっと60点以上となっています。特に、全校でマークシートが導入された平成28年からは、大問5の記述問題が2問(10点分)が記号問題に変わり、得点しやすくなったようで、平成28年には70点を超え、29年も70点に近いように、平均点が高くなりました。
以上から、国語は全体的に点の取りやすい教科といえます。したがって、他の受検者も点を取るため、落とした分だけ差をつけられるわけです。国語が苦手な受験生は気を引き締めてかかる必要がありますね。
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都立高校一般入試・国語の出題構成
都立入試の国語は全部で5つの大問から構成されます。
- 大問1:漢字の読み(全10点)
- 大問2:漢字の書き(全10点)
- 大問3:物語文の読解(全25点)
- 大問4:論説文の読解(全30点)
- 大問5:古典鑑賞文の読解(全25点)
問題と配点の構成は過去15年以上変わっていません。今後も大きく変わらないと予想されます。
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出題傾向の詳細分析と対策方法
ここからは、大問ごとにもう少し詳しく出題の傾向を分析していきましょう。
大問1:漢字の読み(全10点)
問1~問5まで各2点で出題されます。
記号で答えるのではなく、実際に書いて答える問題です。漢字検定5級~3級レベルで、中学校全学年の内容がまんべんなく出題されています。
目安の解答時間:30秒~1分
大問2:漢字の書き(全10点)
問1~問5まで各2点で出題されます。
大問1と同じく、すべて書いて答える問題です。漢字検定3級レベルの知識があれば、充分に対応できるでしょう。
なお、「楷書で書け」という指示がされているので、日頃から字が雑な受験生は要注意です。
目安の解答時間:1分~1分30秒
大問3:物語文の読解(全25点)
小説を読んで、設問に答える問題です。
1問5点で全5問が出題されます。
問1~問4は記号で答える問題です。
問5は記述で答える問題で、場面に合わせた登場人物のセリフを書くものです。
目安の解答時間:13分~16分
大問4:論説文の読解(全30点)
事実に基づいて筆者が意見を書いた文章を読んで、設問に答える問題です。
1問5点の記号問題が4問と、10点の作文問題が1題出題されます。
問1~問4は記号で答える読解問題です。
問5は200字の作文で、本文のテーマについて自分の考えを書くものです。「具体的な体験や見聞も含めて」という指示が出されることが通例んsので、これを無視すると大幅に減点されます。
目安の解答時間:18分~22分
大問5:古典鑑賞文の読解(全25点)
古文・漢文と聞いて敬遠する受験生の多い単元です。
しかし、実際には古文・漢文について現代語で書かれた鑑賞文を読んで答える読解問題です。1問5点×5問で出題されます。
3題は記号で答える問題で、本文の内容についての理解を問うものです。
残り2題は記述で答える問題です。
そのうち1題は、指定された語句(「なおも」「少なからず」など)を用いて短い文を書く問題です。もう1題は、古文・漢文の現代語訳を書いて答える問題で、一見難しく感じますが、本文中の現代語文から抜き出すので、慣れれば簡単に正解できるようになります。
平成28年以降、全校でのマークシートの導入に伴い、記述問題が2題とも記号問題に変わりました。これにより、正解の確率が上がり、全体の平均点向上に影響していると思われます。
もっとも、この27年以前の傾向に戻る可能性も否定はできませんから、記述問題へ対応力を磨く勉強も引き続き必要です。
目安の解答時間:14分~17分
こうして見ると、次のような特徴が浮かび上がります。
- 漢字の読み書きが全部で20点と、漢字の配点が大きい
- 読解問題がすべて1問5点と、1問当たりの点が高い
- 全体の半分以上(55点)を、記号問題が占めている
- 記述問題も、読解力というより自分の考えを示すものが多い
まとめると、都立高校の国語の入試の対策のポイントは以下のとおりです。
- 長文を速く正確に読み、理解する練習が必要。
- 漢字は小学生で覚える問題も。大体漢検3級レベルあればOK。
- 自分の意見をまとめて論理的な文章で表現することが大切。
執筆
石井 知哉(いしい ともや)