平成30(2018)年度「都立高一般入試」まるわかり② 〜 学力検査
果たして今年の入試はどうだったのか? 受け終えた受検者はもちろん、来年に受検する予定の中学2年生のみなさんも大いに気になることでしょう。
そこで、School Postでは「都立高校一般入試まるわかり」企画をお送りしています。第2弾となる本記事では、入試問題を分析、わかりやすく解説します。都立高校を目指す方は必読の内容です。
※ 本記事は2018年2月23日当時の公式発表をはじめとする情報に基づいたものです。
執筆
石井 知哉(いしい ともや)
試験の概要
2月23日(金)に実施されました。原則として5教科(国語、数学、英語、社会、理科)ですが、一部の高校では3教科(国語、数学、英語)で実施しました。これらに加えて、24日(土)に面接を行う高校もありますし、実技検査を行う専門学科高校もあります。
時間割は以下の通りです。
・国語…9:00~9:50
・数学…10:10~11:00
・英語…11:20~12:10
・社会…13:10~14:00
・理科…14:20~15:10
※ 面接、実技検査の日時は各高校によって異なります。
悪天候や交通機関のトラブルなどによる時間変更はありませんでした。
試験は5教科とも全校で共通問題で行われました。ただし、一部の高校では、3教科(国語、数学、英語)については自校作成問題での実施となります。
共通問題・解答用紙・正答などはこちら
(東京都教育委員会のホームページに移動します)
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試験問題の総括
全教科、問題数や出題形式に大きな変化はありませんでした。マークシートが導入された平成28年度から今年度で3年目となります。各教科、マーク解答と記述解答の問題数や問題の難易度のバランスなどが固まりつつあると見てよいでしょう。
以下、教科ごとに簡単にまとめました。
【国語】
問題の構成・配点は昨年度から変更なしです。昨年・一昨年同様、記述解答は漢字の読み・書きの計10問(20点分)と200字作文(10点分)のみで、70点分が4択マーク解答です。
この形式になって以降、受検者平均点が高くなっています(平成28年度が73.9点、平成29年度が69.5点)。つまり、それだけ正解を出しやすくなったということです。このことを出題者側も意識したのか、今年度は読解問題で正解選択肢を選ぶのがやや難しくなっています。受検者平均点は60点台前半から65点前後に落ち着くと予想されます。
【数学】
問題の構成・配点は昨年度から変更なしです。4択マーク解答が4問(20点分)と増え、数値・数式解答が12問(60点分)と減りました。証明問題2問(14点分)、作図1問(6点分)は例年通りです。
全体的に解きやすい問題が多く、数学が得意な受検者は満点も充分狙える難易度でした。特に、ここ数年難しくなっていたは大問2が、今年度は比較的シンプルで、正答しやすくなっています。こうしたこともあり、例年55点~60点の間に落ち着くことが多い受検者平均点も、今年度は60点を超えて65点近くなると予想されます。
【英語】
問題の構成・配点は昨年度から変更なしです。昨年同様、記述解答はリスニングで1問(4点分)とテーマ英作文(12点分)のみで、84点分が4択マーク解答です。
問題難易度は昨年度に比べて大きく変わるところはありません。昨年度から出題方法が変わったテーマ英作文ですが、受検者は過去問や模試などを通じて対策を積んでおり、慌てることなく対応できたと思われます。その分、受検者平均点もやや上がり、50点台後半から60点を超えたあたりになると予想されます。
【社会】
問題の構成・配点は昨年度から変更なしです。昨年同様、記述解答は2問(10点分)のみで、90点分がマーク解答です。
歴史の時代順並べ換えや地理の国・都道府県の合致など、複数マークし完答のみを正解とする問題が7問(35点分)に増えました。つまり、当てずっぽうで正解することが減りました。また、わずかな判断ミスが正解・不正解を分けることになります。したがって、得点しにくくなり、その意味で難易度は上がったといえます。受検者平均点は例年は60点をやや下回る程度でしたが、今年度は50点台前半から55点前後に下がると予想されます。
【理科】
問題の構成・配点は昨年度から変更なしです。昨年同様、記述・作図解答が3問(12点分)、88点分がマーク解答で、うち1問は複数マークし完答のみを正解とする問題です。
ここ数年は難易度が高くなっていましたが、今年度は、文章や図表・グラフなどの情報読み取り分量、正答に必要な知識量は昨年度と同等で、受検者平均点は55点前後になると予想されます。
2019年度以降はどうなる?
以上見てきたように、2018年度の都立高校一般入試は、ここ数年の流れを踏襲したもので、昨年度から大きな変化はありませんでした。では、2019年度以降はどうなるでしょうか?
まず、当面の間(2019、2020年度)は大きな変更はないと考えてよいと思います。2016年度に内申点計算方法の変更やマークシートの導入を行ってから3年。今のところ、改善が必要な事項は特に見当たりません。もちろん、問題の内容や難易度は毎年微調整を行うでしょうが、向こう2、3年の間は、試験の仕組みや実施方法など、5教科全部の大枠については大きく変わることはないと思われます。
ただし、英語のスピーキングテストの導入については、注意をしておくべきです。2017年12月に一部の新聞でも報じられたので、ご存知の方もおられることでしょう。
現在、英語教育の場においては、4技能(「読む」「書く」「聞く」「話す」)を総合的に育成することが望ましいとされ、大学入試では、センター試験に代わる「大学入学共通テスト」や民間の資格試験(英語検定、TOEIC、TEAPなど)の導入により、4技能すべてを評価する方向に変化しています。
東京都でも、2017年7月に検討委員会を設置し議論を重ね、その報告書が12月に発表されました。これによると、現行の試験で測れるのは「読む」「書く」「聞く」の3技能であるため、「話す」技能も測定できるように試験内容の見直しが必要だという結論となっています。想定スケジュールとして、2018年度に具体的検討を行い、2019年度以降、プレテスト→一部実施→拡大実施と進めるそうです。
これを見る限り、スピーキングテストの導入は既定路線です。しかし、実施の時間・場所、評価者の確保など、実施に当たっての課題はたくさんあります。それらのクリアに必要な時間を考えると、実際に全校でスピーキングテストを入試で行うのは、まだかなり先のことになると思われます。
したがって、今後都立高校の一般入試を目指すお子さんは、英語のスピーキングテストについては注意を払いつつ、まずもって5教科の学力と内申点の向上に努めるべきです。
東京都教育委員会の報道発表はこちら
(東京都教育委員会のホームページに移動します)
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「都立高校一般入試まるわかり」企画・第2弾はいかがでしたでしょうか。第3弾からは教科別の傾向と対策に入ります。どうぞお楽しみに!
執筆
石井 知哉(いしい ともや)