鉛筆の持ち方を変えると字が変わる! 〜美文字の法則〜
執筆
ゆり華(ゆりか)
正しい鉛筆の持ち方~鉛筆は持つのではなく、つまむもの~
鉛筆は、持つと言うよりも「つまむ」という感覚の方が近いです。人間は、物を親指と人差し指の指のはらを使ってつまみます。例えば500mlのペットボトルをつまむとき、ボトル本体か、あるいはキャップの部分を持つことが多いでしょう。そのときに指のどこが触れているかを観察してみてください。おそらく親指と人差し指(あるいは中指も)の指のはらでしょう。重いペットボトルでも、そんなに力は必要なくつまむことができます。指のはらの裏側には爪があり、伝わってきた力が爪で跳ね返ることで、わずかな力でも重いものが持てたり押せたりするのです。深爪で爪の面積がせまいと、重いものが持ちづらくなったりするようです。
鉛筆もこの指のはらでしっかりとつまみましょう。
具体的に指のはらとは
- 親指→拇印(ぼいん)を押すところ
- 人指し指→インターフォンやボタンを押すところ
次に登場するのは中指です。中指はそっと下から枕のように鉛筆を支えます。このとき、第一関節の手前くらいで支えるようにします。爪の付け根辺りではなく、もう少し深いところを目指しましょう。
この中指は縁の下の力持ちの役割をします。中指に、残りの薬指と小指を階段のように少しずつ重ねながら添えます。この3本はいつも一緒に動きます。
小さな子どもに「お兄さん、お姉さん、赤ちゃんの3人兄弟はいつも一緒よ、赤ちゃんだけ置いていかないでね」と言うと3本の指を大事そうに握りしめてくれます。
このとき、親指は「く」の字、人差し指は「へ」の字に曲げて、指でオッケー印を作ります。
その空洞からのぞくと小指が見えるくらい、手の中に小さい卵を持っているくらいの空間を空けます。
鉛筆の角度は50度くらいに傾け、人差し指の付け根に鉛筆を倒すようにし、鉛筆の後ろは斜め後ろの席の人を指すような角度が好ましいです。
鉛筆をどう動かすか~指にはそれぞれ役割分担がある~
正しい姿勢で椅子に座り、きちんと鉛筆を持てるようになったら、次はその鉛筆の動かし方、運筆法です。
文字を書くとき、それぞれの指を曲げたり伸ばしたりしながら、力ではなく圧をかけながら運びたいところに指で運んでいきます。この指を屈伸させる一連の動きは、ダーツや紙飛行機を飛ばすときと同じイメージです。飛ばす瞬間まで力を溜めて助走をつけるようなところもよく似ています。その動きを紙の上でするのが、字を書くということなのです。
指には役割が決まっています。
- 横画は親指を横に押す
- 縦画は人差し指で真下に押す
- 回るとき、はねるとき、はらうときは中指の第一関節あたりで持ち上げたり、速度をコントロールして運んだり、操る(このとき薬指と小指が一緒に動くことでより力強く伸びやかなはねや払いを表現できる)
たとえば、「し」というひらがなを書くとき、書き始めは人差し指でぐーっと真下に押します。そろそろ右方向にカーブするなというときに、親指に進行役がバトンタッチされ、いよいよ最後というときに、中指(薬指と小指も)でゆっくり、すーっと持ち上げて払うというような運びになります。まさにシームレス(=継ぎ目のない)な指同士の連動によって鉛筆を運んでいきます。
このように指を曲げたり伸ばしたりしながら、指で文字を運ぶように書くと、意図するところに鉛筆を動かすことができるようになります。つまり、お手本を真似できるようになり、最終的には美しい文字に近づいていきます。
この一連の姿勢~持ち方~運筆法は文章でお伝えするより、本当はリアルタイムで指導したい内容です。文字の指導は楽器のレッスンに似ています。書いているまさにそのときに改善していく必要があります。
書くリズム、強弱、濃淡、指の動きや圧を見て、より伸びやかに美しく表現できるようになるのが理想です。
姿勢や持ち方などの基本をしっかり身につけてから、テクニックを向上させていくようにしましょう。
書かれた文字を見ると見当がつきますが、払うタイミングや力の入れ具合など、実際に指導すると、その奥深さに驚かれることが多くあります。
生徒からは
- 「字を書くことの認識がガラリと変わった」
- 「すべてにきちんと理屈がある」
- 「人間の手ってすごいですね」
など、感動に近い感想を述べていただくこともあります。
姿勢や鉛筆の持ち方、動かし方には書く基本が詰まっているのです。
多くの方がテキストや通信教育で挫折してしまうのは、基本を定着させることなくテクニックを磨こうとしてしまうからでしょう。
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ゆり華(ゆりか)