つばさ総合の総合学科とは
※本記事は、2014年08月時点での取材内容を基にしています
つばさ総合が語る。「総合学科高等学校」とは?
総合学科とは、必修科目の他に選択科目が多く設置されており、カリキュラムを自由に設定できるのが特徴の学校です。
選択科目は大抵、「系列」というグループに振り分けられています。
この「系列」とは、「どういう分野の進路を目指すか」に応じたグループ分けのようなもので、「設置されている系列は学校の前身に左右されます」と吉岡先生。
考え方も学校によって違い、自分が属する系列を選ばせることによって選択の範囲を制限する学校や反対に全く制限しない学校があります。
それでも専門学科と比べると、入学後に考え方が変わった場合の「やり直し」が効きやすいのも総合学科ならでは。
また、もう1つ特徴的なのは「産業社会と人間」という授業。これは、文部科学省の定める指導要領の中で決められたものです。
指導要領内にはいくつかの目的が定められているだけで、その中身は学校によって様々。
そのため、学校の違いが出やすい授業の1つです。
吉岡先生に、総合学科とは?と質問すると、「難しいですね」と答えを探します。
広報担当のため、よく聞かれる質問らしいのですが、一言で言い表すのは難しいことなのだそう。
それでも強いて一言でいえば、と前置きの後「普通科にも(なる)、専門学科にも(なる)、途中でやり直しもできる学校」だと教えてくれました。
「やりたいことはあるけれど、それを続けられるか自信がない子が、見極めるための学校ともいえます」とも。
また、普通科と専門学科との両方の性質を合わせもつため様々な生徒が入学してくるのもメリットの1つだといいます。「生徒間の刺激は多いと思いますよ」と吉岡先生。
自由の極み!設備に自信がある、つばさ総合高等学校
つばさ総合には、5つの系列が設置されています。
- 「美術・デザイン」
- 「科学技術」
- 「国際・コミュニケーション」
- 「スポーツ・健康」
- 「生活・福祉」
これらは2014年度からの系列で、以前の系列から生徒のニーズに近づけるために改定されました。
入学してくる生徒に人気なのは「美術・デザイン」と「スポーツ・健康」。中には「デザインを仕事に!」と燃える子や「スポーツが好き!」という子など、これらの授業を目当てに入学してくる生徒もいるそう。
系列別の授業が始まるのは2年生になってから。
そのため1年生は、2年生時に履修する選択科目を11月までに決定するといいます。
つばさ総合の場合は、系列による履修授業の制限がなく、「系列は目安のようなものです」と吉岡先生。
基本的には、どの系列に所属していても、全ての系列の授業を受けることが出来るのです。
そのため、たとえばスポーツ系の授業は人気だそうで、設備の関係で物理的な人数制限があることもあり、科目によっては毎回規定人数をオーバーしてしまうと嘆きます。
「単純な講義の授業であれば、講義数を増やして対応できるのですが」と残念そう。
なぜ系列に制限を設けないのでしょうか?と質問すると、
「将来の夢を決めて入ってくる子は少ないし、複数の系列にまたがるような夢を持つ子も多いからです」との回答。
中には「途中で目指す道を変えたい」という子もおり、実際目指す先を変える子もいるそう。
そんな時に、系列の制約がないことで、柔軟に対応が出来るところがつばさ総合の特徴なのです。
また、実はつばさ総合では普通科の高校と同じ様なカリキュラムを組むことも、不可能ではありません。
珍しい専門教科が目立ちがちですが、大学進学を見据えた生徒たちは普通5教科も多く選択しているそう。「生徒も普通5教科も大事だと考えているようです」と吉岡先生。
他に他校と比べて、つばさ総合の強みは?との質問には、「設備ですね」との返答。
広いグラウンドはもちろんのこと、情報や美術の専用教室はかなりの数なのだそう。
学校を楽しむ環境、勉強する環境は、非常に整っているといえそうです。
つばさ総合の「産業社会と人間」というキャリア教育
つばさ総合では、「産業社会と人間」の授業を週2コマ設けています。
「働くことのイメージを具体化させる」と「10年後のキャリアを考えさせる」の2つを目的としたキャリア教育が中心です。
始まりは、2泊3日の合宿の中で行う課題解決の練習です。
教員から出された課題に対して、グループワークを通して自分なりの解答を導いていきます。
これは、「考え方の練習です」と吉岡先生。キャリアを考える上で必要な考え方の訓練になるのだといいます。
その次が、レディネステストと呼ばれる職業の適性テストの様なもの。6カテゴリの領域に対する自分の関心・興味の程度と自信度がレーダーチャートとして示されます。
その結果には具体的な職業例が載っているので、そこから生徒は気になった職業について調べ学習を開始します。
ここでは、業務内容だけではなく、職業のなりにくさ、食べていけるかなど、自分の将来にふさわしいかどうかを調べるそう。他にも、外部の人を呼び講演をしてもらうなど、職業について知る機会を多く設けます。
夏休みには、全員に上級学校を1校見てくるという宿題が課されます。
大学がどんなところなのか、実際に見てイメージさせるのが目的です。
2学期になると職業インタビューを行います。気になった職業に生徒自らアポイントをとります。
最低限の電話マナーなどだけ教え、基本的には生徒のみでインタビューまで行います。
過去には総理大臣にアポイントをとろうとした生徒もいるらしいのですが、惜しくも日程が合わず実現はしなかったそう。
質問内容は予め授業の中で考えます。職業そのものについてはもちろん、インタビュー相手の動機や実際の体験記など人物にスポットをあてたものまで。
インタビューが終わると、インタビューを通して感じたことを1人ひとりが整理して、プレゼンテーションを行います。最初はクラス単位ですが、その中から生徒の投票と先生の推薦で数名が選抜され後日、学年全体の前でもプレゼンテーションを行います。
「まとめる力、ネガティブなものも含めて得たものが大きい子の発表は、みんなに聞かせたいと思います」と吉岡先生。
3学期はいよいよ大詰め、ライフプランの作成です。
既に社会人として働くつばさ総合の卒業生や教員からの今までのキャリアなどを聞きながら、自分のライフプランを作っていきます。吉岡先生は「最終的に決まっていなくてもいいんです。決まっていないなりに、今後どうしていくかが分かっていれば」とにこり。
このライフプランも職業インタビュー同様、最後は発表です。大体の生徒が1人3分間の持ち時間をオーバーするくらい盛り上がるそうです。
この頃と最初の合宿研修時と比べると「(生徒たちは)ここまで変われるのか」と生徒の成長を喜ぶそうです。
つばさ総合は夢が決まっていない子の味方!
どういった子が、つばさ総合に合っていると思いますか?と質問すると、
「好奇心旺盛な子の方が、この学校のシステムを有効に使い倒せます」とのこと。
今いる生徒も普通科ではない総合学科に飛び込んでくるくらいですから、好奇心旺盛な子が集まるといいます。
好奇心をもって様々な科目を学んでいけば、卒業後の進路先でも他の普通科出身の生徒たちと比べて立てるスタートラインが違うといいます。選択科目で専門教科も経験し、「産業社会と人間」で先のライフプランをもって進んでいるため、大学などの入学後のギャップも少なく、社会に出た際も満足度は高いのだといいます。
最後に吉岡先生からこんなメッセージをもらいました。
「将来(の目標)などが決まってないことは、ここでは不利になりません。やってみたいことを「探したい」と思っている子に来てほしいと思っています」
まだ将来のことがわかっていない、やりたいことがない。だけどそれを探したいという意識があれば、つばさ総合で見つけることができるのでしょう。
この記事で紹介した学校はココ!
東京都立つばさ総合高等学校
平成14年度(2002年)に開校した、都立高校2番目の全日制総合学科高校。生徒が自分の将来のあり方・生き方を考え、自ら進路選択を果たせるように「キャリア教育」に力を入れている。また、都立高校初の「ISO14001」認証校として環境教育にも力を注ぐ。設備にも恵まれており、全天候型400mトラックのある広大なグラウンド、屋内プール、2つのアリーナなどが特徴。
編集後記
総合学科高校について、ご存知だったでしょうか?普通科のようで、専門学科のようでもある。まさに二つの特性を組み合わせた新しい形の学校と言えるでしょう。つばさ総合高校はその中でも自由な学校らしく、「あれもやりたい・これもやりたい」というようなお子さんにはピッタリ。将来を考えると専門的なことを早くから学びたいけれど、何が合っているのか分からない、という様なお子さん、総合学科高校という選択肢はいかがですか?