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晴海総合の総合学科とは

晴海総合の総合学科とは
普通科の進化系といわれる総合学科。都内で始めて設立され6つの系列をもつ晴海総合高等学校(以下、晴海総合)に、晴海総合が考える総合学科と、そこに通う生徒たちについてお話を聞いてきました。取材に応じて頂いたのは、長年晴海総合に勤める千葉先生と広報担当の中村先生です。

※本記事は、2014年09月時点での取材内容を基にしています

晴海総合が語る。総合学科とは?

総合学科は「普通科の進化系なのです」と千葉先生はきっぱり。「今の時代は学校で教えている知恵だけでは社会は生き抜いていけません。受け身ではなく 主体的に学んでいけるかが重要です。 そのため教育方針も変えていかないといけません」とも。総合学科高等学校は、これらの考え方に則り開校された学校だとし、そのため主体性を重んじ生徒自ら、生涯を通して学んでいく態度を身につけられるような学校作りを目指しているとのこと。

現代の教育には、何が足らないと考えていますか?と質問すると、千葉先生から「コミュニケーション能力、プレゼン力が足りません。そこで本校では、『産業社会と人間』『課題研究』などの授業に発表の機会を多く設けているのです。あとはアンテナを社会に向けて張っておけるかどうかです」との回答。

『産業社会と人間』での発表の様子
『産業社会と人間』での発表の様子

また晴海総合では「やりたいこと探し」が大切だといいます。「子どもたちは受け身ではなく、やりたいことがあれば勝手に学びます。そこに偏差値は関係ないのです」とも。さらに「晴海総合は、『やりたいことを極めなさい、その代り国語や数学は多少目をつむるよ』という学校です」と千葉先生は自らの言葉で語ってくれました。

一方、中村先生は未だに総合学科高等学校のことを理解していない人が多いことを嘆きます。専門学科高校とひとくくりにされることもあり、就職がメインですか?と質問されることもあるそう。 また、「情報誌で専門学科の中に総合学科を含められる場合もあり、『そうじゃないんだけど』と思います」とも。中村先生は、総合学科高等学校のことを「表現が悪いかも知れませんが」と前置きしつつ、「デパートみたいなもの」と表現します。その理由は、授業を商品とすると晴海総合は生徒のニーズに合わせた授業を常に取り入れているからだといいます。そのため教員側は大変なようで、「本校にしかない独自の授業を担当することもあります。でも『できません』とはいえませんね」と表情を引き締めます。

生徒のニーズによって変化する、晴海総合とは?

晴海総合高等学校は、東京都立京橋高等学校と、東京都立京橋商業高等学校が統合し平成8年に開校しました。前身の学校が商業科を含んでいたこともあり、開校以来商業系のカラーを残しつつ、今は以下6つの系列から成っています。

  • 情報システム
  • 国際ビジネス
  • 語学コミュニケーション
  • 芸術・文化
  • 自然科学
  • 社会・経済

晴海総合はその系列に所属する生徒を対象とした系列科目と、系列に関係なく全ての生徒が選択できる自由選択科目があります。そのため柔軟な授業選択が可能です。例えば卒業後留学を考えている生徒は語学コミュニケーション系列に所属し、語学を勉強する一方で自由選択の中から茶道や華道など日本の伝統文化を学ぶことができます。

国際交流
国際交流も!!
日本舞踊の授業
日本舞踊の授業
郷土芸能の授業
郷土芸能の授業

中には、「ファッション造形基礎」のように系列専門科目と自由選択科目の両方に開講している授業もあります。これは生徒のニーズに対応するためで、系列専門科目だけに設置すると他系列に所属する生徒のニーズを満たせないからだといいます。授業科目は多少の入れ替わりがあるそうで、最近(2014年度現在) では「栄養」の授業が追加されました。 これは生徒数の約8割が女子という晴海総合ならではの変化です。なぜなら自然科学系列に所属する女子生徒の中には、将来の進路に看護や栄養系を希望する生徒がいるからです。そのため、そのニーズをくみ取り2年前より新たに開講され、今年は30名の生徒が受講しています。

系列の中では芸術・文化系列の人気が高いそうで、「年々、美術が好き、という子が増えている気がしますね」と中村先生。人気の系列に生徒が集中したらどうするのですか?と質問すると、中村先生は「施設・設備が許すかぎり、全て受け入れるしかありませんね。でも例えばPCが40台しかなくて、生徒が42名集まると悩ましいですね」と教えてくれました。

晴海総合にとって系列とは、普通科でいうコースに近いものだといいますが、「選択指導を一年間かけて受けて系列を選び2年生からスタートする」ことと「授業科目が幅広い」ことを違いとして挙げています。入学前から進む系列を決めている生徒が多いのですか?との質問には、「半々ですね。入学後に分かることのほうが多いですから、変わる子もいます」とのこと。

もう一つ特徴的なのは進学方法。晴海総合では高校3年生の12月ごろになると半分以上の生徒が進路を決めています。なぜなら将来自分が進む道を常に考え、系列専門科目や自由選択科目で大学レベルの授業を学んだ上で大学を選ぶため、AO・公募推薦で合格しやすく、進路を決めている生徒が多いからです。

これらの進路は生徒が主体的に活動して決めています。生徒240人いれば240通りの異なる希望があります。先生はその一緒になって調べなければわかりません。大学に合格させるための指導ではありません。例えば、専門学校と短大で進路を悩むケースの場合は、「日常を見てくるように」とアドバイスをするそう。オープンキャンパスなどの進学先が準備をしている日ではなくて、普段の日常を見た方が本当の姿がよく分かるからだといいます。

さらに中村先生は、系列や授業を選ぶにあたって生徒たちに「やりたいこと」だけとるのではなく、「必要な授業」をとるように指導しているといいます。「授業のとり方を失敗すると、カルチャースクールみたいになってしまいます。それではいけません」と語気を強めます。10年、20年先を見据えて授業を選択することが必要不可欠なのです。

晴海総合の「産業社会と人間」というキャリア教育

「産業社会と人間」の授業は1年次に週2時間で行われ、総合学科高等学校の必履修科目として設置されているものです。晴海総合では、様々な取組を通し、将来の進路を考えるきっかけを与えています。

初期に行う活動に、千葉館山で行われるフレッシュマンキャンプと呼ばれる2泊3日の宿泊研修があります。ここでは「学びとは何か?」を探求します。これは例えば「Aの職業につきたいBさんが、希望の職業に就くためには晴海総合でどのよう授業をとって学んでいけばいいか」という設定された人物を班に分かれて考えていきます。この取組で、今後1年間をかけて自分たちがすることの大枠が分かるのです。

9月には6つの系列の説明を受け、生徒たちは改めて自分の進路決定を意識します。2年次の時間割の決定は12月。それまでに保護者と話し合ったり面談を行ったりしながら、生徒は進路にあった時間割を決めていきます。また、11月には職場訪問もあります。約20か所ある候補から、生徒が希望する職場へ足を運びます。職業観勤労観を醸成する取組です。

こうした取組を通して、2年生から授業を受ける系列を決めますが、将来自分の個性を活かすことを踏まえて授業を決めていきます。「(生徒たちは)きついと思います」と中村先生。なぜなら普通科のようにある程度決められたレールに乗って、最後に選択すればいいわけではなく、絶えず「あなたはどうするの?」と問いかけられ選択を迫られるからです。これは主体性の育成を重視する晴海総合だからこそ。

また晴海総合では進路は指導するものではないとして、「進路”指導”部」を「相談」として設置しています。当然「進路指導室」ではなく、「ガイダンスセンター」という部屋を設置しています。そこにはキャリアカウンセラーの先生がいるので、生徒たちは迷いと悩みを相談し、支援を受けながら自らの進路に対する答えを探していくのです。

中村先生は、自分の授業を「種まき」みたいな授業と表現します。「(教員側は)ヒントになるものは残すけれど、それに水をあげるのも、肥料をあげるのも、育てるのは生徒自身です」とのこと。

これら1年をかけてやってきたものを最後に「ライフプラン」という形でまとめます。クラスごとの発表のあと、2名のクラス代表を選び、学年全員の前で発表して「産業社会と人間」の授業は幕を下ろします。

晴海総合の生徒たちは卒業後もつながっている

晴海総合の生徒たちは、 行動力のある子が多いそう。

「近隣の小学校からボランティア要請の話があった」 と生徒たちに話をすると、 自ら進んで 「やるよ」 と答える生徒がいるといいます。「お互いの緊張はほんの少しで、すぐに楽しげにボランティアに入れるようになります」と中村先生。さらに「やれることは、 なんでもやりたい」という子が多く、「抱え込みすぎじゃない?」と声をかけることもしばしば。校風としては、伸ばしたい部分を伸ばすスタイルのため、「ひたすら歌っている子や踊っている子もいる。でも『それでいいんじゃないの』っていう雰囲気です」と中村先生。

生徒たちの中には卒業後、就職の内定や進級、留学などいくつかの転機に学校を訪れて報告してくれる生徒もいるそうです。また、卒業後も生徒同士のつながりがあるそうで、例えば、CD制作をする卒業生は、そのCDのカバーの絵を美術系に進学したクラスメイトにお願いしたりするそうです。こういったつながりも、クラスに様々な得意をもつ生徒が集まる総合学科高等学校ならでは。

最後に、 中村先生からSchool Postをご覧の親御様に向けたメッセージを頂きました。

「(学校を選ぶ際、最終的に)普通科に決めてもいいのですけど、総合学科を一度見てから決めてほしいと思います。『関係ないわ』や『知らないわ』ではなく、『見て』『聴いて』『感じて』から選択してほしいと思います。保護者の方から『私の時代にこんな学校があったら、私が入りたかった』や『こんな学校があるとは知りませんでした』というお声をたくさん頂くので、お手間かと思いますが、是非一度見に来ていただけたらと思います」

特色的な充実した教育をおこなっている学科ですが、まだ知らない方も多い総合学科高等学校。
もし可能なのであれば、学校に足を運んでいただき、総合学科を知って見てほしいと思います。今までの学校の概念を覆す出会いがあるかも知れませんよ。

編集後記

総合学科、自由がゆえに自立と自律が大切になってきますね。学生時代はこんな学校があったとは知りませんでした。また実は取材時、中村先生にお話を聞かせいただいた後、夏休みに開かれていた千葉先生の「恋愛の科学」という補習授業を見学させていただきました。恋に落ちたときの身体のメカニズムなどの生理現象を化学物質と関連させた内容の授業で、生徒たちも「ふむふむ」と聞き入っていました。こういった講義を補習でおこなうのも、総合学科ならではだと思います。

この記事で紹介した学校はココ!

東京都立晴海総合高等学校

東京都立晴海総合高等学校

平成8年度(1996年)に開校した、都立高校最初の全日制総合学科高校。「生徒一人ひとりの個性を大切にした教育」「生徒一人ひとりの違いを大切にした教育」の展開を求めた学校で、「生徒の良さや可能性を伸ばす」「生徒の迷いや悩みに応える」「生徒の生きて働く力を育てる」の3つを教育活動の基本姿勢としている。