姿勢を変えると字が変わる! 〜美文字の法則〜
皆さんも、子どもの勉強しているときの姿勢が気になったことはありませんか。じつは、この「姿勢」は、美しい字を書くうえでとても大切なのです。
執筆
ゆり華(ゆりか)
美しい文字は書く姿勢から
<子どもたちの気になった姿勢>
- 左の肘をついているため上半身が左に傾いている
- 上半身をふせた状態でノートをとっている
- 机と顔の距離が近い(数センチしか離れていない)
姿勢をよくしましょうと言われると、背筋をピンと伸ばしてみて、やがて疲れてしまい元に戻ってしまう。こんなサイクルを繰り返して、子どもたちも、いつのまにか自分流の座りかたになってしまっているのでしょう。
ちなみに、学年が上がるほど姿勢は乱れていくように感じます。学習時間が長くなるほど、楽な姿勢で過ごしたくなるのは当然です。
しかし、悪い姿勢を続けると、背骨が歪んでしまう場合もあります。習慣的な座り姿勢は健康状態にも影響します。大人になってから体の不調が出ることも少なくありません。指摘されないとなかなか本人は気づきにくいので、早めに教えてあげましょう。理想的な座り方を知るだけでも姿勢が変わってきます。
それでは、子どもの字が気になる方は、我が子の書いている「姿」をじっくりと観察してみてください。字は見なくて大丈夫です。
私たちは文字が美しいかどうかを判断するとき、文字そのものを見てしまいがちです。しかし、じつは書く前の段階が重要であり、美しさを左右します。書く前の姿勢や持ち方こそが、美しい文字へのアプローチの約80%を占めているのです。
下のチャートをご覧ください。美しい文字を書くために、
テクニックだけを覚えても実にならない!!
まず、土台をしっかり習得
→幼少期に身につけると良い
- 正しい姿勢で椅子に座る
- きちんと鉛筆を持つ
- 正しい運筆法で鉛筆を動かす
これらの基礎的な部分をマスターしなければなりません。
この土台がしっかりしていないと、いくら文字のバランスや体裁を整えようとしても(テクニック)、伸びやかな美しい文字は書けません。仮に下にお手本を透けさせて写したとしても、流れも勢いもないただの線になってしまいます。
では、具体的に一つひとつ紐解(ひもと)いていきましょう。
正しい姿勢で椅子に座る
机と椅子は子どものサイズに合わせましょう。両足はしっかりと床についていますか。椅子が高過ぎてぶらぶらと宙に浮いていないでしょうか。大人でも、バーカウンターのような高い椅子では、不安定で字を書くのが難しいです。子どもには学習環境を整えてあげましょう。リビングのテーブルなどでは、しっかり足がつくように足置き台を置くとよいでしょう。机はみぞおちの辺りに来るよう高さをセットしましょう。
ではいよいよ座り方です。名づけて「エレベーターチェック!」、下から徐々に上がっていきます。
両足はしっかりと踏みしめて床につけます。足と足の間は、消しゴム一つ分くらい空けても大丈夫です。両ひざはなるべく閉じましょう。これだけでも下腹部に少し力が入り、自然に骨盤(こつばん)がまっすぐになるのを感じられるでしょう。次に上半身を真上に引き上げたら、背もたれにはもたれません。前の机にも寄りかかりません。骨盤を傾かせずに起こすことで、背骨も真上に伸びていきます。目安としては、おへその後ろの背骨がぐりぐりと手で触れれば、背中が曲がっています。背骨が背中に収まっている状態をめざしましょう。
ところで、「うちの子は姿勢が悪くて・・・」とおっしゃる方は多いです。お子様にぜひ、ここまでを特訓してみてください。この座り方は辛いはずですが、5分間キープできるよう訓練してみましょう。
次に、椅子には少しだけ深く腰掛けます。膝から足の付け根までの3分の2が椅子に乗るくらいの深さです。お腹と机の間は握りこぶし一つ分空けるのが理想とされていますが、集中すると前のめりになってしまう場合が多いです。そのときは上半身を元の位置に起こすとよいでしょう。
お腹の次は肘(ひじ)です。字を書くときだけではなく、
- 人の話を聞くとき
- ご飯を食べるとき
は肘をつきません。とおまけをつけて指導すると子どもの心に残るでしょう。
この肘ですが、残念ながら9割以上の子ども、そして大人の方も、特に左肘をついて書いていることが多いです。そうすると確かに楽なのですが、体の重心が一気に左斜め方向に歪(ゆが)んでしまいます。体にエレベーターが走っているようなイメージで、上半身もまっすぐに保ちましょう。
肘をつかないと言っても、腕は肘から手首側に5センチくらいの位置から机に置き、肩の力を抜いて、上半身の重みをその腕に預けるようにします、決して肩と手首に力を入れないようにしましょう。
いよいよエレベーターは最上階に向かいますが、盲点なのが、首です。首から上が机と平行になっていると危険信号です。顎(あご)と首の間が二重顎になるくらい隙間がない、なんていう子どももときどき見かけます。
何が問題かというと、首の後ろが完全にピンと張っているような状態になり、首や肩が疲れてしまい、集中力が短時間しかもたない、つまり勉強が続かず、嫌いになる可能性が高いのです。さらに黒板とノートを目線で行ったり来たりするのではなく、亀のように首を上下に動かして追うわけですから、授業が苦痛でたまらなくなります。ノートをとるのも時差が生まれてどんどん遅くなります。
首は少しだけ傾ける程度、顎と喉(のど)の間に消しゴムが入るくらいの余裕を残します。視界はゆったりと前に、目の前の人がノートに何を書いているかが見えるくらいがよいでしょう。もし視界が自分のノートだけだったら、首と頭が下を向いている証拠です。
書く前に、以上のことに気をつけて座ってみましょう。足元から少しずつ「エレベーターチェック」で確かめるとよいでしょう。この当たり前のことを確実に、自然にできるようになることが美しい文字への第一歩です。
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ゆり華(ゆりか)