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【社会】の大問[4]の解説:都立一般入試の攻略法

【社会】の大問[4]の解説:都立一般入試の攻略法
都立一般入試の社会の問題を大問別で解説していきます。都立の入試にも傾向があります。それゆえに対策もあるのです。社会が苦手だと感じる方はぜひご活用ください。
石井 知哉(いしい ともや)

執筆

石井 知哉(いしい ともや)

都立一般入試の社会、大問4の配点と構成

都立高校一般入試の社会の大問4は歴史についての出題です。
大問の冒頭であるテーマについての時代ごとの移り変わりについて述べた文章が示され、そこで取り上げられた都道府県についての小問が4つ出題されています。1問5点で合計20点の配点となります。この構成は過去15年以上変わっていません。

記号で解答する問題が3問、論述して解答する問題が1問という内訳です。記号問題のうち1、2問は、4つの記号を時代順に並べ替えすべて合っていて正解、というものです。年度によって出題順は異なりますが、大きな構成は今後も大きく変わらないと予想されます。

主題のねらいは「世界の歴史を背景にした我が国の歴史について、年表等の資料を活用して、政治、経済及び文化等の面から考察し、適切に表現する能力をみる」とされています。
(東京都教育委員会「東京都立高校入学者選抜学力検査結果に関する調査」より引用)

  • 歴史的事実に関する問題
  • 資料から考察して論述する問題

の2つが主な出題タイプです。
以下、それぞれのタイプごとの攻略方法を紹介します。実際に都立高校入試の社会の問題を見ながらご覧頂くと効果的です。

問題・正答は東京都教育委員会のホームページで公開されています。

歴史的事実に関する問題の攻略の方法

歴史的事実に関する問題についてみていきます。

【出題の傾向】

<過去の出題内容>
  • 平成21年度
    問1:4つの記述のうち、鎌倉について述べたものを選ぶ
    問2:飛鳥時代から室町時代について述べた4つの記述を、時期の古いものから順に並べる
    問4:江戸時代から昭和時代について述べた4つの記述を、時期の古いものから順に並べる
  • 平成22年度
    問1:4つの記述のうち、室町時代の流通経路について述べたものを選ぶ
    問2:Ⅰの略年表(安土・桃山時代から明治時代にかけてのもの)中の4つの時期のうち、Ⅱの文章で述べている政策(田沼意次の政策)が行われていた時期に当てはまるものを選ぶ
    問4:明治時代から昭和時代について述べた4つの記述を、時期の古いものから順に並べる
  • 平成23年度
    問1:4つの記述のうち、鎌倉時代の農具の利用について述べたものを選ぶ
    問2:Ⅰの略年表(平安時代から江戸時代にかけてのもの)中の4つの時期のうち、Ⅱの文章で述べている貿易(勘合貿易)が行われていた時期に当てはまるものを選ぶ
    問3:明治時代から昭和時代について述べた4つの記述を、時期の古いものから順に並べる
    問4:Ⅰのグラフ(乗用車の生産台数の推移を示したもの)の4つの時期のうち、Ⅱの文章で述べている時期(石油危機と日米貿易摩擦)に当てはまるものを選ぶ
  • 平成24年度
    問1:飛鳥時代から室町時代について述べた4つの記述を、時期の古いものから順に並べる
    問2:Ⅰの略年表(鎌倉時代から江戸時代にかけてのもの)中の4つの時期のうち、Ⅱの文章で述べている人物(狩野永徳)が活躍していた時期に当てはまるものを選ぶ
    問3: 4つの記述から、略地図中の4つの位置に当てはまるものを1つずつ選ぶ
    問4:明治時代から昭和時代について述べた4つの記述を、時期の古いものから順に並べる
  • 平成25年度
    問1:飛鳥時代から安土・桃山時代について述べた4つの記述を、時期の古いものから順に並べる
    問2:Ⅰの略年表(平安時代から江戸時代にかけてのもの)中の4つの時期のうち、Ⅱの文章で述べている経済活動(定期市、明銭の使用、馬借の活動など)が行われていた時期に当てはまるものを選ぶ
    問3:江戸時代から昭和時代について述べた4つの記述を、時期の古いものから順に並べる
  • 平成26年度
    問1:古墳時代から室町時代について述べた4つの記述を、時期の古いものから順に並べる
    問2:Ⅰの略年表(室町時代から明治時代にかけてのもの)中の4つの時期のうち、Ⅱの文章で述べている商業活動(西回り航路の開通、蔵屋敷の設置)が行われ、文学作品(井原西鶴の『日本永代蔵』)が作られた時期に当てはまるものを選ぶ
    問3:明治時代から現代について述べた4つの記述を、時期の古いものから順に並べる
<出題パターンの分析>

毎年必出のタイプです。

出題の型としては、
・問題で示された時代についての記述を選ぶ問題
・4つの記述を時期の古いものから並べる問題
・Ⅰの略年表中からⅡの文章で述べた時代を選ぶ
・地図を取り入れた問題
の4つに分けることができますが、いずれも本質は同じです。平成24年度以降は、並べ替え問題が2問出題されており、難化したといえます。

<求められている能力>

学校の定期テストのように範囲が絞り込まれているわけではありませんから、1つ1つの時代についての深く細かい知識はあまり必要ありません。

・記述からどの時代のことであるかを読み取る能力
・時代の前後関係や年代の正確な知識
・各時代における経済、社会、文化の変化に関する知識
・歴史的事実と地理的な位置とを関連づける能力
が求められています。

<今後の出題予測>

略年表・文章を用いた問題と並べ替え問題が中心になるでしょう。どちらも知識の正確さが要求されています。

【攻略の手引き】

試験前日までに身に付けてきた知識がそのまま発揮されやすい問題です。 様々な時代が全て出題されるので、全時代についての広い知識が必要です。 人によっては、定期テストよりも簡単という印象を受けるかもしれません。

それでは、具体的な攻略法をご紹介します。

  • ポイント1:与えられた情報からどの時代のことであるかを読み取る
    社会の都立入試で最も重要なポイントです。記述や文章の中に、時代名を導く“キーワード”が必ずあります。 ここから時代名が出てくるかどうか、これがすべてです。 「覚えていなかった」「思い出せなかった」というのであれば、残念ですが、諦めるしかありません。
  • ポイント2:並べ替え問題は時代名をメモしてから並べ替える
    頭の中の記憶だけを頼りに並べ替えると、ミスが出やすくなります。
    まずは4つの記述のそれぞれに時代名をメモしておくこと。そこから記号で時代順に並べて、解答用紙に記入しましょう。
    同じ時代の中での並べ替えになることはめったにありません。 ただ、江戸時代や明治時代、昭和時代の3つは、長期に渡り出来事も多かったことから、これらの時代から2つの記述が出題されることもあります。 前半・後半、あるいは前期・中期・後期くらいの区別もしておくと、万全です。
  • ポイント3:略年表の年代からどの時代かを割り出す
    略年表を用いた問題については、年代の知識も必要です。年表に書かれた出来事から時代名が容易にわかることもありますが、各時代の始まりと終わりの年代は覚えておいた方が安全でしょう。

【目安の解答時間】

1分〜1分30秒での解答を心がけましょう。
全体的に問題文が短めなので、解答に時間はかかりません。歴史が得意であれば、1問10秒で解けることもあるでしょう。知識の有無がすべてと言っても過言ではありません。ただし、文章や年表の中に思いも寄らぬヒントが隠れていることがあります。そこを見落とさないように丁寧に読み込む必要があります。

資料から考察して論述する問題の攻略の方法

主に問3または問4で出題される、資料から考察して論述する問題についてみていきます。

【出題の傾向】

<過去の出題内容>
  • 平成20年度
    問3:Ⅰ~Ⅲの資料を参考に、江戸との関係に着目して、関所の役割について簡単に述べる
  • 平成21年度
    問3:官営の八幡製鉄所が日本を代表する製鉄所となった理由について、Ⅰ〜Ⅲの資料を活用し、立地に着目して、簡単に述べる
  • 平成22年度
    問3:百貨店の立地がどのように変化したか、Ⅰ〜Ⅲの資料を活用し、鉄道路線と人口の変化に着目して、簡単に述べる
  • 平成23年度
    出題なし
  • 平成24年度
    出題なし
  • 平成25年度
    問4:Ⅱで示した地域の土地の区画がどのように変化したか、ⅠとⅡの資料を活用し、変化が求められた理由に触れて、簡単に述べる
  • 平成26年度
    問4:玉川上水とその分水が作られた理由を、Ⅰ〜Ⅲの資料を活用し、政策に着目して、簡単に述べる
<出題パターンの分析>

平成20年以降の新しい出題パターンです。23、24年度は2年連続で出題はありませんでしたが、この数年はまた出題されています。都立入試の社会に特有なタイプの問題です。略地図や略年表、文章など、複数の資料を同時に読み、問われたことについて記述します。記号ではなく文章を書いて解答する形ですから、苦手意識をもつ受検者も多いことでしょう。

「記述式の問題や作図の問題では、各学校で部分点を与えるなど採点上の配慮を行っている」(東京都教育委員会「東京都立高校入学者選抜学力検査結果に関する調査」より引用)とあるように、部分点をつけるための採点基準を各高校で設けていると思われます。

<求められている能力>

学校の定期テストではめったに見られないタイプの問題です。この出題形式に慣れていないと容易には得点できません。「歴史は得意だけどこの問題だけは苦手」という声もよく聞きます。

・設問の指示を漏れなく汲み取る読解力
・複数の資料から情報を読み取り、処理する力
・表やグラフから問いに関する特徴的な項目を読み取る力
・歴史的な背景を推察する論理的思考力
・適切な日本語を用いて表現する記述力
が求められています。

<今後の出題予測>

大問4においての必出パターンなので、今後も毎年出題されると考えて間違いありません。このタイプは大問4だけでなく、大問3、5、6でも出題されているため、多ければ20点分につながります。

【攻略の手引き】

大問4の中でも最も複雑な出題形式です。過去の出題内容からも明らかなように、多くの受検者にとって、ほとんど未知の問題です。ですから、知識が得点に直結することはありません。逆に言えば、「社会は覚えるのが苦手」という場合でも、得点することが可能です。

以下、具体的な攻略法を紹介します。

  • ポイント1:設問文のラスト1文を読み、出題内容を正確に把握する
    この問題で5点満点を取れないのは、「問いに答えていないから」です。そもそも出題内容を正確に理解できていないのです。 設問文が5、6行と非常に長いのが特徴です。読んでも「何が聞かれているの?」と混乱してしまうような構造になっています。

    採点して得点化する以上、必ず採点基準があるはずなのです。そして、その採点基準は設問文から読み取ることができます。つまり、設問文をよく読まないということは、そもそも採点基準を無視して書いているということです。

    したがって、設問文をよく読み、「出題者は何を書いて欲しいのか」「何を書けば点をもらえるのか」という“出題の意図”を読み取ることが第1歩です。

    さて、このタイプの問題も、設問文が5、6行と非常に長く、読んでも「何が聞かれているの?」と混乱してしまうような構造になっています。

    そこで、まず最後の1文を読むことから始めましょう
    過去の出題内容で示したように、設問文は
    ・問われていること
    ・活用する資料
    ・着目すべき点
    という3つのパートで成り立っているのがほとんどです。

    たとえば、平成26年度の問4の最後の1文は「玉川上水とその分水が作られた理由を、Ⅰ〜Ⅲの資料を活用し、政策に着目して、簡単に述べよ」とあります。 ここでは、
    ・問われていること:玉川上水とその分水が作られた理由
    ・活用する資料:Ⅰ〜Ⅲの資料
    ・着目すべき点:政策
    となります。これらは必ずマルで囲んで見落とすことのないようにしておきましょう。

    ここから、「政策に着目しながらⅠ〜Ⅲの資料を読むと、玉川上水とその分水がなぜ作られたかがわかりますよ」という“出題者からのメッセージ”を読み取ることができます。こうした“誘導”に素直に乗っかるのが最も効率的で確実な得点法です。

  • ポイント2:資料の読み取りと分析
    与えられた資料はすべて意味のあるものです。すべてを活用しないと5点はつかないと考えるべきでしょう。「着目すべき点」に注意して、資料の中で解答に関わる箇所をチェックします。

    「この資料にどんな意味があるのかわからない」という場合もあるでしょう。 その場合は、設問文を読み直してください。それぞれの資料が何を意味しているのか、必ず書いてあります。そこから“ピンとくる”ようになればしめたものです。

  • ポイント3:資料を考察した結果を箇条書きで書く
    ポイント2で分析した結果を、簡単に書いてまとめます。いきなり解答用紙に書くのは、減点される答案の典型的なパターンです。与えられた資料を1つでも無視したら減点されると考え、漏れなく拾うことが大切です。資料が3つあれば、3つのそれぞれからどんなことがわかるかと箇条書きでメモしておきます。こうすることで、漏れなく資料を活用し、減点されない解答を作ることができます。
  • ポイント4:解答を文章でまとめて記述する
    ポイント3で作成した箇条書きのメモを、文章にします。このときに大切なのは、“採点者へのアピール”です。「“出題の意図”をきちんと理解し、設問に正確に解答していますよ」ということが採点者に伝わるように書く、ということです。

    ポイント1で取り上げた3つのパートを意識した解答を心がけましょう。解答用紙に書き終えたら、必ず見直しをしましょう。誤字・脱字や漢字の誤りは減点対象ですから、確実に避けるべきですね。

【目安の解答時間】

3分~4分での解答を心がけましょう。
減点されない解答をするためには、緻密な作業が必要ですから、どうしても時間がかかります。
ポイント1:30秒~1分
ポイント2:30秒~1分
ポイント3:1分~1分30秒
ポイント4:1分~1分30秒
というのが目安です。
時間をかけてでも、丁寧に取り組んで確実に得点したいところです。

中学1・2年生はどんな勉強をすればいいか?

これから受験に向けての準備を進めて行く中学1・2年生も、今のうちから行える対策があります。

定期テストの点数だけを意識するのではなく、先々を見据えて普段の学校の授業や家庭学習に取り組んでおくのが絶対におすすめです。特に、次のような点を意識しながら、勉強して欲しいと思います。

【歴史的事実に関する問題】

  • 用語から何時代のことなのかを、直ちに導き出せるようにしておく。学校で習った範囲分から、「用語→時代名」を答えるような問題を自分で作成してノートにまとめておくと、とても役に立つ。単語カードにすればシャッフルしてより実戦的に練習できるので、更におすすめ。まずは小学校の教科書レベルから確実にしていく。
  • 歴史的な出来事の年代をすべて覚えるまでは必要ない。ただし、各時代の始まりと終わりの年代は覚えておけば確実に有利。
  • 地図と合わせて出題されることも多い。どこで起こったか、地名もセットにして勉強するとよい。地図上での位置も指摘できるようにしておくと、地理の勉強にも役立つ。
  • 歴史の勉強というと、戦乱を中心とした政治的や出来事にばかり意識が向きがちだが、実際によく出題されているのは、経済、社会、文化について。人々の暮らしぶりがどう移り変わってきたのか、現在とどう違うのか、まずはイメージをつくるところから始める。
  • 教科書では頭に入ってこないなら、マンガは特におすすめ。マンガと聞いて反発する親御さんもいるかもしれないが、実際にマンガを熟読するのは、非常に有効な勉強方法。巻数の多いものは相当に詳しく、高校受験に必要な知識は充分過ぎるくらい身に付く。

【資料から考察して論述する問題】

  • 知識量が求められるわけではないため、比較的短期間でも対策が可能。しかし、歴史についての深い知識があれば有利にはたらくことも多い。“教科書的な歴史の知識”よりも、“ちょっとしたサイドストーリー”が役に立つことが多い。その意味でもマンガは役立つ。
  • 早めに過去問で触れて慣れておくのも有効な勉強法。類題が少ないが、実はこのタイプの問題は公立中高一貫校の適性検査でも問われており、適性検査向けの問題集でも力をつけることができる。

是非、参考にしてみてください

石井 知哉(いしい ともや)

執筆

石井 知哉(いしい ともや)