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【社会】の大問[1]の解説:都立一般入試の攻略法

【社会】の大問[1]の解説:都立一般入試の攻略法
都立一般入試の社会の問題を大問別で解説していきます。都立の入試にも傾向があります。それゆえに対策もあるのです。社会が苦手だと感じる方はぜひご活用ください。
石井 知哉(いしい ともや)

執筆

石井 知哉(いしい ともや)

都立一般入試の社会、大問1の配点と構成

都立高校一般入試の社会の大問1は合計15点の配点です。1問5点の小問が3つ出題されています。
構成としては、

  • 問1:地理的分野
  • 問2:歴史的分野
  • 問3:公民的分野

というのが通例です。

平成19、21、22、23、24年度は、
問2:公民的分野
問3:歴史的分野
という構成でしたが、これによって難しかったり得点しにくかったりすることはありませんでした。

問題と配点の構成は過去15年以上変わっていません。今後も大きく変わらないと予想されます。

出題のねらいは「地理的分野、歴史的分野及び公民的分野について、基礎的・基本的な知識・理解及び技能をみる」とされています。
(東京都教育委員会「東京都立高校入学者選抜学力検査結果に関する調査」より引用)

以下、問題タイプごとの攻略方法を紹介します。実際に都立高校入試の社会の問題を見ながらご覧頂くと効果的です。

問題・正答は東京都教育委員会のホームページで公開されています。

地理的分野の攻略の方法

問1で出題される地理的分野についてみていきます。

【出題の傾向】

<過去の出題内容>
  • 平成11年度
    問1:面積と大陸の名前を手がかりに、大西洋を選ぶ
  • 平成12年度
    問1:世界地図と大陸名を手がかりに、北回帰線を選ぶ
  • 平成13年度
    問1:日本国内の生産順位を示した表を手がかりに、畜産物を選ぶ
  • 平成14年度
    問1:世界地図を手がかりに、赤道を選ぶ
  • 平成15年度
    問1:地形図を手がかりに、正しく読み取れる記述を選ぶ
  • 平成16年度
    問1:文章内容と地形図を手がかりに、正しい径路を選ぶ
  • 平成17年度
    問1:4つの空港と国名を手がかりに、北半球を示した地図を選ぶ
  • 平成18年度
    問1:略地図を手がかりに、時差を計算してロンドンの日付と時刻を選ぶ
  • 平成19年度
    問1:文章で述べられた県を手がかりに、高松市の雨温図を選ぶ
  • 平成20年度
    問1:輸出額と輸出品の表と文章を手がかりに、成田国際空港を選ぶ
  • 平成21年度
    問1:文章を手がかりに、北大西洋海流が暖流であることを記入し、海流と偏西風の向きを示す
  • 平成22年度
    問1:文章を手がかりに、群馬県の防風林が植えられている位置を選ぶ
  • 平成23年度
    問1:写真と農産物の情報を手がかりに、正しい略地図を選ぶ
  • 平成24年度
    問1:写真と文章を手がかりに、移動した径路を地形図に示す
  • 平成25年度
    問1:野外観察ノートの文章と地図を手がかりに、その地域の景観を撮影した写真を選ぶ
  • 平成26年度
    問1:文章を手がかりに、対馬海流が暖流であることを記入し、海流と季節風の向きを示す
<出題パターンの分析>

日本地理からも世界地理からもまんべんなく出題されています。印刷技術の発達の影響か、近年は写真を用いた出題が増えています。

ほとんどが記号で解答する問題ですが、平成21、24、26年度のように、解答用紙の地図中に矢印や漢字1文字を記入して答える場合もあります。

<求められている能力>

都立入試の社会全体の傾向を象徴するかのような問題です。
・情報を読み取る能力
・知識の深さや量よりも知識の活用力
が求められています。

<今後の出題予測>

今後も引き続き、地図や表、写真を用いた出題が続くでしょう。

【攻略の手引き】

特にこの数年は、問題を開いた受検者が「なんだこれ!?」と心の中で叫ぶようなものが増えています。しかし、実際には、問題のからくりがわかれば、問われていることは極めてシンプルなことがほとんどです。場合によっては、教科書的な知識が不要なことさえあります。

それでは、具体的な攻略法をご紹介します。

  • ポイント1:設問が求めていることを正確に把握する
    非常に問題文が長いので、一読しただけでは、何が聞かれているのかわかりにくいのです。そこで、“2度読み”をおすすめします。

    まず、1回目は「何が問われているか」を読み取ることに集中してください。例外なく、「何が問われているか」は設問文の最後に書かれています。解答する上での条件(記号で答えるのか、漢字で書いて答えるのか、など)も見落としてはいけません。アンダーラインを引いたりマルで囲んだりして、目立たせましょう。

    2回目は、「解答する上でのヒントになりそうな箇所はないか」と意識しながら読みます。万が一、1回目に見落としていても、ここで必要な情報を拾い切ることができます。

  • ポイント2:文章がある場合は、そこからヒントをくみ取る
    Ⅱの文章(場合によってはⅢの文章)という形で示されることがあります。これは正解につながる重大な手がかりですから、最大限活用する必要があります。ここを読んで「あ、そういうことか」と気付けるかどうかです。文章中に、正解を導くための大きなヒントが隠れているのです。

    たとえば、平成26年度の問題は、略地図に矢印で「冬の季節風が吹く向きを示せ」というものでした。もちろん、冬の季節風が北西から吹いてくることを知っていれば、それで正解できます。もし、ここでその知識がない場合は、「いちかばちか」という当てずっぽうになりがちです。

    ところが、Ⅱの文章を読むと「冬の乾いた季節風は、日本海を渡るとき、海から蒸発した水分を多く含む」とあります。ここから、日本海を渡るような向きであることがわかります。したがって、冬の季節風が北西から南東に向かって吹くと判明します。

    このように、“2段構え”のような形になっています。Ⅰで示された略地図や図表だけで解答することは難しく、Ⅱの文章を手がかりに解答することを意識すると正解しやすくなります。極論すれば、社会の都立入試対策は、このヒントを見つけるための基礎知識を身につける勉強です。

【目安の解答時間】

1分〜2分での解答を心がけましょう。
ただし、年度によって問題の長さや形式が大きく異なるため、柔軟な対応が求められます。読み取るべき情報が多い場合は、急いで解くとそれだけ見落としが多くなり、正解から遠ざかります。問題の分量から、慎重さとスピードのバランスを見極める必要があります。

歴史的分野の攻略の方法

問2または3で出題される歴史的分野についてみていきます。

【出題の傾向】

<過去の出題内容>
  • 平成11年度
    問2:文章を手がかりに、執権を選ぶ
  • 平成12年度
    問2:文章を手がかりに、板垣退助を選ぶ
  • 平成13年度
    問2:文章を手がかりに、博多〔福岡県〕の位置を地図中から選ぶ
  • 平成14年度
    問2:文章を手がかりに、近松門左衛門を選ぶ
  • 平成15年度
    問2:井伊直弼と条約のおもな内容を手がかりに、日米修好通商条約を選ぶ
  • 平成16年度
    問2:文章を手がかりに、原敬を選ぶ
  • 平成17年度
    問2:4種類の切手の発行年と記念内容を手がかりに、3番目に開通した鉄道の開通年した年と鉄道についてのできごとを書く
  • 平成18年度
    問2:文章を手がかりに、足利義満を選ぶ
  • 平成19年度
    問3:文章を手がかりに、浦賀〔神奈川県〕の位置を地図中から選ぶ
  • 平成20年度
    問2:略地図と文章を手がかりに、「城下町」を漢字で答える
  • 平成21年度
    問3:文章を手がかりに、下関〔山口県〕の位置を地図中から選ぶ
  • 平成22年度
    問3:文章を手がかりに、関ヶ原〔岐阜県〕の位置を地図中から選ぶ
  • 平成23年度
    問3:年表を手がかりに、中大兄皇子を選ぶ
  • 平成24年度
    問3:文章を手がかりに、比叡山延暦寺〔京都府〕の位置を地図中から選ぶ
  • 平成25年度
    問2:文章を手がかりに、東大寺〔奈良県〕の位置を地図中から選ぶ
  • 平成26年度
    問2:文章を手がかりに、種子島〔鹿児島県〕の位置を地図中から選ぶ
<出題パターンの分析>

文章や年表などの与えられた手がかりから、地名や人物名と解答するパターンが主流です。平成17、20年度のような例外はありますが、総じて類似した形式で出題されています。地名を問われた場合、地図中から選択して解答するので、日本地図の正確な知識も要求されています。その意味では、地理的な要素も含まれている問題です。

<求められている能力>

学校の定期テストとは出題の仕方は多少異なるものの、教科書にないレベルの知識は求められていません。
・文章中のキーワードから歴史的事実を読み取る能力
・知識の深さよりも地理につながる知識の広さ
が求められています。

<今後の出題予測>

今後も引き続き、地図や年表を用いた出題が続くでしょう。

【攻略の手引き】

一見して迷うような出題の仕方は滅多にされないので、基礎的な知識をいかに解答に結びつけるかが鍵を握ります。問われている出来事や人名も、非常にメジャーなものばかり。場合によっては小学校の教科書レベルのものが出題されます。

以下、具体的な攻略法を紹介します。

  • ポイント1:文章中のキーワードから歴史上の出来事や人物名を連想する
    ほとんどの場合、「Ⅱの文章で述べている出来事があった位置に当てはまるのは」という出題なので、まずはⅡの文章を読むことがすべてです。文章中には解答に直結しないような情報もありますが、かならず「どの出来事なのか」がわかるようなヒントがあります。

    教科書や参考書で必ず目にしたことのあるはずのキーワードです。ここから、出来事名や人物名が判明したら、殴り書きでも構わないので問題用紙にメモしておきましょう。

  • ポイント2:出来事と地図を関連づける
    出来事→地名→地図上の位置という順で、知識から知識をつないでいきます。
    このとき、歴史や地理が苦手だとすぐに地図上の位置につながりません。ポイント1で判明した出来事と同様、連想した地名もメモしておきましょう。
    こうすることで、手がかりが自分の目に見える形になります。頭の中だけで考えていても思い出せないものが、文字情報になると思い出しやすくなる、ということがあるのです。

【目安の解答時間】

30秒〜1分での解答を心がけましょう。
比較的設問文も短く、手がかりとなる資料も少ないため、必要となる情報は小量です。逆に言えば、知識が鍵を握るので、記憶にない場合はいくら考えても正解に近付くことはありません。どうしても思い出せない場合は、一度飛ばして先に進むべきでしょう。 他の問題を解いている最中に、ふと思い出せることがあるかもしれません。

公民的分野の攻略の方法

問2または3で出題される公民的分野についてみていきます。

【出題の傾向】

<過去の出題内容>
  • 平成11年度
    問3:文章を手がかりに、立法権の行政権への抑制を選ぶ
  • 平成12年度
    問3:文章を手がかりに、「社会資本」を漢字で答える
  • 平成13年度
    問3:文章を手がかりに、「国際連合」を漢字で答える
  • 平成14年度
    問3:文章を手がかりに、社会福祉を選ぶ
  • 平成15年度
    問3:文章を手がかりに、条例を漢字で答える
  • 平成16年度
    問3:文章と歳出の内訳を示した表と手がかりに、岩手県を選ぶ
  • 平成17年度
    問3:文章を手がかりに、「関税」を漢字で答える
  • 平成18年度
    問3:文章を手がかりに、クーリング・オフを選ぶ
  • 平成19年度
    問2:文章を手がかりに、「閣議」を漢字で答える
  • 平成20年度
    問3:文章を手がかりに、高等裁判所を示した略地図を選ぶ
  • 平成21年度
    問2:文章を手がかりに、「検察官」を漢字で答える
  • 平成22年度
    問2:文章を手がかりに、「司法権」を漢字で答える
  • 平成23年度
    問2:文章を手がかりに、「比例代表制」を漢字で答える
  • 平成24年度
    問2:文章を手がかりに、「物価」を漢字で答える
  • 平成25年度
    問3:文章を手がかりに、「両院協議会」を漢字で答える
  • 平成26年度
    問3:文章を手がかりに、「裁判員(制度)」を漢字で答える
<出題パターンの分析>

文章を手がかりに、用語を漢字で書いて解答するパターンがほとんどです。
平成16、20年度のような例外はありますが、毎年ほぼ同じ形式で出題されています。「漢字で書け」という条件指定があるので、漢字で正しく書けなければ0点です。

<求められている能力>

「〜を何というか」という一問一答形式の問題に近いものです。
学校の定期テストで良く出るタイプなので、違和感は少ないでしょう。
・文章内容から公民に関する用語を結びつける能力
・漢字で記述できる知識の正確さ
が求められています。

<今後の出題予測>

今後も大きく出題形式が変わることはないでしょうが、各省庁が発行している白書や統計集、図表や写真といったように、資料を読み取らせるような要素が加わる可能性はあります。

【攻略の手引き】

大問1の中では最もストレートな出題形式です。ひねりがない分だけ、知識が得点に直結します。過去の出題内容からも明らかなように、問われているのは、教科書に太字で扱われている非常に重要な用語ばかりです。試験当日までの勉強がものをいいます。

以下、具体的な攻略法を紹介します。

  • ポイント1:文章中のキーワードから正確な概念を読み取る
    用語の難しさがそのまま公民的分野の難しさです。特に、用語とその内容が正確に対応していなければ、正確な知識とはいえません。

    ・「司法権」と解答すべきところを「裁判権」と誤答
    ・「比例代表制」と解答すべきところを「普通選挙」と誤答
    ・「物価」と解答すべきところを「均衡価格」と誤答
    ・「両院協議会」と解答すべきところを「議院内閣制」と誤答
    (いずれの誤答例も、その問題に対応していないだけで、きちんと存在している用語です。)
    という誤答パターンが過去多く見られるように、似たような概念と勘違いして間違えるケースが非常に多いのです。

    単に知識不足というだけでなく、「問題を読まなかったために間違えた」という受検者も多いようです。「あとでもう一度解いたら正解できたのに、本番で慌てていたせいか早とちりして誤答した」というのでは、泣くに泣けません。

    記号で解答するのではなく書いて答えるのですから、曖昧な知識では得点に結びつかないのです。特に制度名や法律名、機関名は中学生には想像がつきにくいのか、混同しやすいところです。
    たとえば、「独占禁止法」という法律と「公正取引委員会」という機関は、どの教科書でも同じ単元に登場しているはずです。その成立の目的・趣旨は同じといってもよく、セットで扱われます。こうした用語が出題された際には、問題文をよく飛んでいないと勘違いが発生します。 問われているのが「制度」なのか「法律名」なのか「機関」なのか、正確に読み取る必要があります。

  • ポイント2:誤字・脱字がないか確認する
    漢字で書いて解答するわけですから、漢字のミスは5点か0点を分ける致命的なものです。答えを書いている途中に次の問題のことを考えると、往々にしてミスが発生します。書き終えるまではその問題に集中し、書いた漢字を必ず見直して確認する必要があります。

    また、平成26年度のように、「裁判員制度」を解答させる問題でも、解答用紙にあらかじめ「制度」が書かれている場合は、もちろん「裁判員」とだけ書けば充分です。しかし、自分の解答欄が「裁判員制度制度」となっていても、なかなかそれに気付かないのが、入試という緊張状態の恐ろしさです。実際に、「この中に1つ見ればすぐにわかるミスがあるよ」と伝えた後でもそこに気付かない、そんな中学生を多くみてきました。
    普段しないようなミスが出てしまうのが本番ですから、「自分の解答のどこかに間違いがあるに違いない」という視点で見直しを行う必要があります。

【目安の解答時間】

30秒〜1分での解答を心がけましょう。
歴史同様、設問文が短く、手がかりとなる資料も少ないため、必要となる情報は小量です。知識がすべてなので、知らなければアウトです。記号で解答する問題ではないため、まぐれ当たりも期待できません。ここで時間を浪費するより、次の問題に移るのが得策です。

中学1・2年生はどんな勉強をすればいいか?

これから受験に向けての準備を進めて行く中学1・2年生も、今のうちから行える対策があります。

定期テストの点数だけを意識するのではなく、先々を見据えて普段の学校の授業や家庭学習に取り組んでおくのが絶対におすすめです。特に、次のような点を意識しながら、勉強して欲しいと思います。

【地理的分野】

  • 日本地図の知識は必須。
    特に都道府県の位置は地図上で正確に覚えておく。
  • 一時に比べて出題が減ったが、世界地図も再び出題される可能性は大きい。
    特に6大陸・3大洋、赤道・北回帰線・南回帰線などの位置は地図上で正しく指摘できるように。普段よく目にするメルカトル図法だけでなく、正距方位図法やモルワイデ図法の見方も身につけておくとよい。
  • 地形図の読み取りもできるように。
    特に教科書に出てくる地図記号はできるだけ多く覚えておく。
  • 方位・方角の情報は文字情報だけでは足らない
    地図に絡めて実際に矢印の向きで視覚化して覚える。

【歴史的分野】

  • 年代はセットで覚える
    歴史的事件の起こった年代だけでなく、関わる人名や発生した地名もセットにして覚えるようにする。特に地名は地図上で指摘できるようにしておく。
  • 自分でまとめておく
    学校で習った範囲分から、「出来事の内容→事件名→人名・地名」を答えるような問題を自分で作成してノートにまとめておくと、とても役に立つ。
  • 漫画も有効活用
    歴史が苦手・興味がもてない、というのであれば、小学校の教科書やマンガでイメージをつくるところから始める。

【公民的分野】

  • 小学校から扱っている
    3年で学習する分野だが、その入門レベルの内容を小学校で扱っている。民主政治や選挙制度、三権分立など、土台となる知識を小学校の教科書で復習しておくと3年になって習ったときに理解がしやすい。
  • 教科書太字レベルが最低限
    教科書の太字レベルの用語については、「定義→用語」を正確に解答できることが最重要。
  • 用語から定義を導けられるように
    似たような概念を混同しないためにも、「用語→定義」を導き出せるようにしておくことも大切。授業で習った範囲から、ノートにまとめておくと、都立入試と定期テストのどちらの対策にも使える武器になる。
  • 用語の区別を習慣化する
    習った用語は「考え方」「制度」「法律」「機関」のいずれに当たるのか、区別をつけるよう習慣付ける。
  • 漢字を正確にしておく
    用語は漢字で正確に書けるようにしておく。これは定期テストでも役に立つ。

是非、参考にしてみてください

石井 知哉(いしい ともや)

執筆

石井 知哉(いしい ともや)