高校受験の学校選びは4つの学校見学の機会を活かす
執筆
石井 知哉(いしい ともや)
学校見学にはどんな種類があるの?
ひとえに「学校見学」といっても、次のように様々な種類の機会があります。
- 説明会
学校の教育方針や指導体制、カリキュラム、進路実績、学校生活の様子などを、校長先生をはじめ各担当の先生たちが説明してくれます。オリジナルの学校紹介ビデオを放映する学校も増えています。土日祝日に開催することが多いようです。最もメジャーなイベントです。 - 授業公開
学校のふだんの授業をそのまま見学できます。いわば「中学生とその保護者による授業参観」ですね。授業の様子や受けている生徒たちの態度・姿勢などがよくわかります。
その高校の「ありのままの姿」を見ることができる貴重な機会です。土曜日開催がほとんどで、年間を通しても回数がそれほど多くはありません。 - 授業体験・部活体験
実際に、授業を受けたり部活動に参加したりできます。つまり「1日体験入学」です。生徒や先生と直接交流することができるので、その学校の雰囲気を肌で体験できます。イベントの特性上、夏休みに多く開催されます。 - 合同説明会
複数の学校が1つの大きな会場に集まって行う説明会です。学校ごとにブースに分かれ、興味のある高校のブースで先生から話を聴くことができます。短時間で多くの高校の情報を入手できる機会です。「学校案内のパンフレットを手に入れたい」「手短かに話を聴きたい」というときには非常に役立ちます。「まだ具体的な志望校が決まっていない」「併願校をどうしようか迷っている」という場合には、おすすめです。
それぞれの特徴を踏まえて、効果的に使い分けると、有意義な学校見学ができますよ。
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学校見学はいつから始まるの?
時期によって、開催される行事はかなり違ってきます。大まかに次のようなスケジュールをつかんでおきましょう。
- 5〜6月
説明会や授業公開が少しずつ開催され始めます。 - 7〜8月
説明会や授業公開、合同説明会が増えてきます。夏休みには授業体験・部活体験も開催されます。 - 9〜10月
学校見学のピークです。説明会を中心に、高校も最も力を入れる時期です。毎週説明会を開催する高校もあるくらいです。 - 11〜12月
この時期になると、機会が大分減ります。
「後で行けばいいや」などと思っていると「気付いたら終わっていた」なんてことにも。事前の情報収集は抜かりなく行いたいものです。
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学校見学では何を見ればいいの?
見学に行くと、ついつい進学や部活動の実績や設備・施設に目がいきがちですよね。もちろん、これはとても大切なことです。しかし、これらの情報は学校案内パンフレットやホームページでも見ることができるものです。
せっかく高校に行くのですから、行かないとわからないものを見ておきたいものです。では、どこを見ればいいいのか? ズバリ、次の2点です。
- 生徒たちの実際の取り組み方
- 先生の熱意
これらは文字情報からは伝わってくるものではありません。ですから、実際に高校に行って自分の目で確かめないと、絶対にわかりません。
「生徒たちの授業を受け方はどうか?」「先生たちはどんな風に指導しているか?」という点は特に意識しておきたいところです。ですから、授業公開や授業体験・部活体験は、こうした点を知るための絶好のチャンスです。
ある都立の人気校の校長先生がこんなことをおっしゃっていました。
「下駄箱の上、生徒用トイレ、生徒・先生の挨拶の様子、この3つを見れば、その学校の良し悪しはわかる」と。
その心は、次のようなものでした。
- 下駄箱の上は、放っておくとホコリもたまり、生徒が私物を重ね置きしがち。整理整頓や清掃がきちんとできているかどうかがわかる。
- 生徒用トイレが清潔に使われているかどうかを見ることで、その学校の生徒の「人としてのレベルの高さ」がわかる。
- 生徒・先生同士の挨拶はもちろん、来校者(見学に来た外部の人)に対して生徒・先生がしっかりと挨拶できている学校は、コミュニケーションがきちんと取れていて指導が行き渡っている。
もし、校内の様子を見ることができるなら、以上も見ておきたいポイントです。
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学校見学での注意点ってあるの?
見学するに当たっては、「実際にその高校に通うつもり」で行くことをおすすめします。「その高校の生徒になったつもり」で見学すると、多くの発見があります。せっかく時間をかけて見学に行くのです。「行ったけど何も印象に残らなかった」というのでは、ただの時間の無駄です。
また、見学の行き過ぎにも要注意です。年度の後半になり、何度も行ったことのある高校では、説明会でも新たな情報はあまり得られません。既に志望校が固まっているのなら、もはや“高校選び”は必要ありません。あとは「どうやって志望校に合格するか」だけ。すなわち、合格するための努力に時間を使うのみです。
それなのに、毎週のように見学に行っていては、肝心の受験勉強の時間が減ってしまいます。いくら見学をしても、実力も内申点も上がりはしません。
もちろん、“志望校の空気”を吸うことで受験勉強のモチベーションにつながる効果もありますから、そうした効果を狙うのであれば話は別です。しかし、「学校見学に行くから」と「受験勉強をお休みにする」ことの“言い訳”にしているようなら、一大事です。
そのほか、次のような点は気を付けておきたいものです。
予約について
多くの場合は予約不要です。しかし、授業体験や部活体験については人数の限りがあるため、予約が必要なのが通例です。知らないうちに申込締切が過ぎていたり定員に達していたり、ということだけは避けたいものですよね。
ワンポイントアドバイス
学校見学の行事については各高校のホームページで案内があります。見落とさないように、気になる高校については、ブックマークをつけておいて、1週間に1度はチェックするようにすれば見落としがなくなりますよ。
服装について
お子さんは中学校の制服が最適です。実際、制服を来て見学に行く中学生が圧倒的多数です。「制服だと目立つんじゃないか?」と心配する子もいるようですが、制服は“中学生の正装”です。これから通うかもしれない高校の先生と会うのです「制服姿で恥ずかしい」なんてことはありません。「自分も人から見られている」という緊張感と「人に恥じない自分であろう」という意識は、受験生として持ち続けておきたいものです。
親御さんも「何を着ていけばいいのか?」は悩みどころではないかと思います。「カジュアル過ぎては悪印象かも?」「フォーマル過ぎると、気張っていると思われやしないかしら?」など、何かと気を遣うのでは?これは単純に、お子さんの制服姿とセットで考えればよろしいかと思います。つまり、中学生の親として公式の場にふさわしい服装にしましょう。
お子さんの小学校の卒業式に出席された親御さんは、そのときの服装をイメージすれば間違いはありません。高校説明会に行かれる親御さんを見かけることがありますが、お子さんは制服姿、親御さんはスーツ姿、というのが良い緊張感と高い意識が垣間見えて、好ましく感じられます。
自宅からの行き来について
ほとんどの方が、高校までの行き来に電車やバスなどの交通期間を使うことでしょう。お子さんがふだん電車に乗り慣れない場合、路線検索から駅の乗り場、最寄駅から高校までの道のりと、何から何まで親御さんが手配することもあるでしょう。もちろん、そうしたサポートは必要ですが、本当に行きたい高校であれば、お子さんにやらせるべきです。実際に入試当日はお子さんが一人で高校まで行くわけですから、「親御さんがなんでもかんでもやってあげる」というのはおすすめできません。
せっかく時間をかけてする学校見学ですから、有意義な時間にしたいものです。そのためには事前の準備と心構えを整えておくことが必要です。実りある学校見学となることを願っています。
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執筆
石井 知哉(いしい ともや)