子どもが進んで勉強をするために親ができるひとつの習慣
執筆
中里 太一(なかざと たいち)
行動を起こすきっかけとなる6つの感情
人間が行動するきっかけは、以下の1~6に大別されます。
- 楽しい
- やらないと気持ち悪い
- 直近の不利益、または利益がある(例:叱られる・ゲームを買ってもらえる)
- 時間がたった後に不利益、または利益がある(例:仕事に就けない・いい会社に入れる)
- 目標・目的がある
- 楽、または面倒くさくない
この1~6のどこれかに当てはまれば、人は行動を起こします。では、子どもが進んで勉強するようになるためのきっかけとしては、どれがいちばん現実的でしょうか。
勉強の楽しさを味わうこと、目標・目的を持つことはハードルが高い
子どもに勉強の楽しさを味わわせるのは王道ですが、これは指導のプロでもなかなか大変です。勉強よりもすぐに楽しめることが、たくさんあるからです。タブレットやスマホを使って、LINE・ゲーム・YouTubeなどの動画サイトを見るなど、手軽で楽しいものが今の世の中には溢れています。だから、勉強がゲームよりも楽しく感じないかぎり、子どもはゲームをします。小・中学生の勉強にゲームより大きな楽しさを見出させるというのはなかなか難しく、うまくいくケースは少ないででしょう。
食べ物でも「食べてみると意外とおいしい」という理由では子どもは食べません。手軽に、しかもおしいい食べ物が周囲にいくらでもあるのに、「思ったよりはおいしい」程度のものを継続的に食べるかと言われれば、食べないはずです。
目標・目的を見出して、その手段として勉強と結びつかせることもなかなかハードルが高いものがあります。小・中学生から、明確な目標を持ち、そのために勉強するというのは子どもにとっては難しいことです。
不利益の回避、利益を得るために勉強するということの難しさ
また、子どもに時間の有限さを言い聞かせたところで、行動を改めることはありません。子どもは「勉強しないと仕事につけないよ」と言われたところで、遠い将来のことまで実感を持てないからです。そこで、よく行われるのが、ごほうびを与えることです。
ごほうびは効果のある子どももいます。ただし、デメリットとして利益を与える刺激は、際限がなくなるということです。例えば、最初は100点を取ったらおこづかいを100円をあげるという約束をしたとします。子どもについては、最初はがんばります。しかし、100円の刺激に慣れてくると、しだいに100円では満足しなくなります。そこで200円に…ということをやっていくうちにキリがなくなります。
勉強は習慣化がカギ
そこで、子どもが自分から勉強するには、勉強を習慣化させることがもっとも現実的で、効果が上がる方法です。
例えば、歯磨きを例に考えてみましょう。親は歯磨きの大切さを知っています。だから、一生懸命、歯は大事にしないと将来困ると、子どもに将来の利益や不利益について言い聞かせます。しかし、子どもには響きません。いま自分に歯があるし、困っていないので、その話が子どもに歯を磨かせる行動にはつながらないからです。
子ども自身が歯を磨くようにするには、最初は、親が子どもの歯を磨きます。そして、次のステップとして、子ども自身に歯を磨かせます。この段階が、習慣化するかしないかの分かれ道です。ここで、できる親は、本当に磨いたかどうかを自分の目でチェックします。しかし、「歯を磨いたの?」としか聞かない場合は、習慣化が難しいです。基本的に、歯磨きは面倒くさいもの。だから、その程度の確認では子どもはいくらでも逃げられます。だから、親がチェックする必要があります。そのチェックを毎日続けることができれば、やがて、子ども自身が勝手に歯磨きを始めます。この状態を勉強でも目指すわけです。
つまり、「勉強しなさい」と言うのではなく、まずは子どもと一緒に勉強をすることをおススメします。子どもが勉強している間、親は本を読んでいてもいいですし、自身の仕事をしてもいいでしょう。そして、子どもが勉強を終えたら、実際にできているかを確認してみてください。勉強の進捗を確認し続けることで、しだいに習慣化していきます。
子どもの勉強を習慣化させるのは難しくはありませんが、根気が必要です。子どもの勉強を習慣にさせようと思ったら、まず親自身が子どもの勉強を確認することを「習慣化」するように、心がけてみてください。
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中里 太一(なかざと たいち)