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合格を勝ち取るメンタルのつくり方



上野学園中高のひとり一つの楽器

上野学園中高のひとり一つの楽器
普通コースの他に音楽コースを設ける「上野学園中学校(以下、上野学園)」。ここでは普通コースの生徒も、中学の3年間をかけて、一人一つの楽器を習得する授業「ひとり一つの楽器」を行っています。音楽の演奏は異なる旋律と合わせていくこと。この行為から生徒は他人との関わり方を学ぶといいます。取材では、授業を見学させていただき、担当教員の江川先生と中学3年生の深谷くん、丸山さんにお話を伺いました。

※本記事は、2013年11月時点での取材内容を基にしています

地上5階から流れる旋律を辿ると、そこには吹奏楽団!?

15階建ての上野学園。取材フロアの5階まで上がると、どこからか楽器の音が聞こえてきました。その音を辿っていくと、そこには真剣な表情で楽譜と指揮者に向き合う中学3年生の生徒たちがいました。

アンサンブルの様子1
授業風景

フルート、クラリネット、サックス、トランペットを奏でる生徒全27名が11月30日に控える総合演奏会に向けて練習をしていました。具体的で専門的な指導内容は、まるで吹奏楽団の様です。

授業も終盤に差し掛かったころ、先生が「最後にもう一度」と声をかけると、どこからか「もう酸欠だぁ~」の声。その声からは、身体を追い込むほどの真剣さと、「まだまだ、やれるぞ!」という気概が感じられました。

個人差あって当たり前。教わることは恥ではない。自然にそれが分かる生徒

「ひとり一つの楽器」は、大人になってからの趣味や人前で演奏する経験、音楽を通して学ぶマナーなど数多くの学びを生徒に届けます。その中でも、大きな目的となのは、協調性の向上です。
「音楽を演奏することは、異なる旋律と旋律でハーモニーを作っていくこと。相手の音楽に耳を傾けて、調和していかないといけません」と江川先生。

本取り組みは入学後すぐに始まります。8割ほどの生徒が初めて楽器を触りますが、入学前の学校見学で「ひとり一つの楽器」を知り学校に興味を持つ子も多いそうです。

深谷くんと丸山さんも初めて「ひとり一つの楽器」の授業を受ける際、「あ、きたな」と思ったと口を揃えます。この取り組みは、上野学園の特徴として、生徒たちも楽しみにしているようです。

授業は中学1年生から週1回の1コマ(50分)。1年生から2年生までは、楽器ごとに教室を分けて練習を行います。まずはパート別に分かれて、音を出して合わせることに集中します。

アンサンブルの様子2
授業風景2

そして、3年生にあがると各パートが集まりアンサンブルが結成されます。
今までは同じ楽器だけでの音合わせでしたが、別の楽器が入ることにより、さらに音を合わせることは難しくなります。なぜなら、一般的にトランペットやサックスは音がたくさん出るため、フルートなどと合わせて演奏する際は、バランスを考えて音を抑える必要が出てくるからです。

各パートから始まり各楽器、そして全体と音合わせの範囲を広げていき、相手の音に耳を傾ける傾聴力と、協調性を養っていきます。

「中学1年生の頃はまだまだと感じることが多いのですが、学年が上がるにつれて、音楽もまとまってきます」と江川先生。

多くの生徒が初めて楽器を触るところから始めますが、上達のスピードにはもちろん個人差があります。そんな時は講師が授業の合間に、個別で指導を行います。取材中も生徒の横に立ち、じっくりと教えている講師の姿が印象的でした。

さらに、生徒同士での教え合いも、よく見られる光景なのだそう。
思春期の中学生であれば、上達できない自分を恥ずかしがり、友達からの指導を嫌がる生徒もいそうなものですが、ここではそのような生徒はいないといいます。
なぜなら、こういう気遣いや思いやりは、上野学園ではごく当たり前のことだから。「教員側から、そう指導しているわけではありません。自然にそうなっていました」と江川先生。

音楽から学ぶことは、上野学園が考えていること以上に大きいのかもしれません。

3年間の集大成目前!それぞれの生徒の正直な気持ち

「ひとり一つの楽器」のゴールは中学3年生の2学期に行われる総合演奏会です。保護者の方の他に一般にも公開もしており、毎年大勢の人が訪れます。(※来場は要問合せ)

2013年度の曲目はシチリアーナと呼ばれるイタリア音楽。練習は中学3年生の2学期から行われますが、2学期が始まる9月から演奏会がある11月までの3か月間で、練習時間はわずか10時間ほどです。限られた時間で生徒たちは気持ちを一つに音を合わせていきます。

アンサンブルの様子3
授業風景3

本番を間近に控えた11月上旬。
去年、先輩たちが演奏するのを見て、「大変そうだなぁ」と思っていたという深谷くんは、「本番で一礼のタイミングを外してしまわないか不安です」とはにかみます。吹奏楽部に所属する深谷くんは演奏に不安はないみたいです。

丸山さんは「あぁ、もう(自分たちの番)なんだなぁ」と時間の流れの早さを感じつつ、「クラスとか学年で集まると(気持ちが)”合っているな”と感じます。授業が終わってしまうのが寂しいです」とも。

生徒たちは中学2年生時に、希望進路によって2つのコース(クラス)に分かれます。そのため、本取り組みは学年全体で行う数少ない授業なのです。しかし、クラス間に壁は感じず、全員が仲良く音を楽しんでいるといいます。
「特に、同じ楽器の子とは仲良くなります」とニコリ。

音楽は人との距離も縮めてくれるのです。

最後に、インタビューに応えてくれた二人にこんな質問を投げかけてみました。
「クラスで男子と女子は仲がいい?」

同時に返ってきた答えは二人揃って「ふつう」。ピッタリとあったタイミングは、クラスの仲を物語っているよう。

インタビューに答えてくれた深谷くん(左)と丸山さん(右)2
深谷くん(左)と丸山さん(右)

みんなの気持ちが一つになることができる「ひとり一つの楽器」。
悔いのないように一生懸命に、旋律と仲間の絆を繋いでいってほしいものです。

総合演奏会に行ってきました

2013年12月27日 追記———

2013年11月30日に行われた総合演奏会。
生徒たちは中学校3年間の思い出を乗せて精一杯奏でます。大勢の観客から、たくさんの拍手が送られました。

総合塩素会の様子1
総合塩素会の様子2
総合塩素会の様子3

編集後記

3年間、続けることの大切さ。最後に迎える総合演奏会は圧巻の一言。堂々と成果を披露する生徒たちは、取材時みた時より一回り大きく見えました。音楽は人を成長させるパワーがありますね!

この記事で紹介した学校はココ!

上野学園中学校・高等学校

上野学園中学校・高等学校

東京都台東区にある中高一貫校で、高校からの募集も行う併設校。また同学校法人には上野学園大学、上野学園大学短期大学部などがある。大学などからの流れにより音楽の流れが強いのが特徴。日々の基本として「親切と努力」を指標にしており、人に対しては寛容に、自己に対しては厳しく、ということを教育している。