私立高校一般入試の合格を「現実」に変える方法は存在する
執筆
石井 知哉(いしい ともや)
目次
内申点は見ない。とにかく学力試験!
私立高校の入試では、学力試験の合計で合否を判定します。国語・数学・英語の3教科で実施するのが一般的です。2教科を選択して受けられるという制度のある高校もあります。
内申点は合否判定には無関係ですから、内申点での有利不利はありません。当日の試験の得点が第一です。「テストの点数は取れるけど、なぜか内申点は低い」という受験生は、入試だけを考えれば私立が向いているといえます。
入試の仕組みは多様化している
私立の場合、入試を複数回実施するのが一般的です。多くの場合が2次試験まで行うので、1次が不合格でももう1回チャンスがあるわけです。
1次、2次、3次と続けて受ける受験者は加点措置が取られることもあります。「どうしてもこの高校がいい」というお子さんにはありがたい制度です。
複数のコースを設置している私立高校では、コース毎に仕組みが異なることもあります。大別すると、次の2つのタイプがあります。
- そもそも試験問題が違う(特進コースは難易度が高い、など)
- 同じ問題でも合格ラインが違う(特進コースは8割の得点で合格とする、など)
高校ごとに異なりますから、正しい情報を早くに集める必要もあります。
合格に必要な点数は過去のデータから推測!
私立の場合は、高校がそれぞれ入試問題を作成します。全体の平均点は100点満点中50〜65点といったところ。年度によってバラつきがありますが、受験者の学力層もある程度固まっていますから、変動が少ないのです。
過去のデータから合格得点の目安がわかります。
- 合格者平均点
文字通りこれがそのまま目安になる - 受験者平均点
不合格者の得点も含まれるので、プラス10点を目安にする - 合格最低点
プラス10点を目安とする
こんな感じで算出することができます。
過去のデータは、高校のホームページや過去問集に掲載されている場合もありますし、説明会で公表されることもあります。たいていの私立高校が、説明会で質疑応答や個別相談の時間を設けています。その場で、合格点の目安をたずねるのもいいでしょう。「悪印象を持たれるのでは?」と心配をする受験生・保護者の声もあるようですが、それは心配ご無用です。
私立の「傾向と対策」
学校によって異なる部分はありますが、一般的に次のような特徴があります。
難易度の高い問題が多い
1・2年で学習した内容でも、ひとひねり加えられており、一筋縄ではいきません。教科書では発展内容とされ、中学校の授業ではあまり扱われないレベルまで出題されることもあります。公立高校入試よりも“一歩踏み込んだ勉強”が必要となります。
問題数が多く1問の配点が低い
どの教科も、1問にかけられる時間は多くありません。しかも、手のかかる問題ばかりなので、おそらく時間内に全て解くので精一杯でしょう。とにかく解答スピードが求められるので、普段の勉強でもストップウォッチやタイマーで時間を計り、解答にかかった時間を記録することをおすすめします。近年では、マークシートを使う高校も多いので、慣れておく必要もあります。
合格ラインはだいたい65%
100点満点で70点を取れればほぼ合格です。難易度や問題数を考えると、85点以上を取るのは、かなり難しいことです。大事なのは、とにかく基本レベルの問題は確実に得点すること。他の受験生の正答率が高いので、これを落とすと差が開きます。その差を詰めるためには、他の受験生が取れないような難しい問題で得点しなければいけなくなり、かなり苦しいことになります。
ですから、思い切って“捨てる問題”を作ることも有効な作戦です。
無理に難易度の高い問題に手を出すより、基本〜標準レベルの問題を丁寧に解き、確実に見直しをする方が先です。
合計点数で判定しますから、苦手教科を得意教科で挽回することも可能です。
国語:70点 数学:55点 英語:85点⇒合計:210点
これでも7割に到達していますから、合格ライン突破です。たとえ1教科で合格ラインに届かなくても、トータルで届けばいいわけです。
ただし、教科数が少ない以上、限界はあります。「2つある苦手教科を残り1教科だけでカバーする」というのは非常に危険です。
まずは、こうした “傾向と対策”を把握すること。そのうえで、合格に必要な点数に届くように取りやすい問題で得点を積み重ねる。これが合格するために効率の良い受験勉強の方法です。
そのためにも、過去の入試問題は必須です。解説付きの問題集が市販されていますし、各高校ホームページで問題・正答を掲載していることもあります。高校で直接販売していることもあるようです。
知って損はないわけですから、調べるのは早ければ早いほど有利にはたらきます。
公立第1志望の場合の賢い併願受験戦略
「第1志望は公立だけど、“滑り止め”で私立も受ける」というのが極めて一般的です。
しかし、公立と私立では、入試の内容が異なりますから、対策も違ってきます。タイプの異なる勉強を同時並行で進める、というのはなかなかに難しいものです。下手をすると、抑えのはずの私立の対策に時間を取られ過ぎて本命の公立対策が足りなかった、なんてこともあるのです。
そこで有効活用したいのが私立の「併願推薦」や「併願優遇」という制度。いずれも一定の内申点基準をクリアした受験生にとって、一般入試の対策の負担を軽くできる制度です。高校によって詳細は異なりますし、実施しない高校もありますから、よく調べておく必要があります。
1・2年生は今すぐ始めよ!情報収集力が合否を分ける!
入試制度は学校ごとに異なりますし、ある年度から変更されることもあります。
こうした情報なしに受験に挑むのは、スポーツでいえばルールを知らずに試合に出るようなもの。「今のところどうなっているんだろう」という情報を常に集められるようにしておく。そして、変更があり得ることを見越して、幅のある対応をできるよう普段から心がける。こうした姿勢が志望校合格につながります。
中学校で教わることもありますし、教えない塾はないはずです。しかし、原則は自分で正確な情報を仕入れること。「そんなの知らなかった」「誰も教えてくれなかった」なんて言い訳は通用しないのです。
情報収集も受験勉強のうちです。受けたい高校のホームページでチェックしてみてはいかがでしょう。
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石井 知哉(いしい ともや)