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「勉強なんて意味ない」と反論する子どもを自ら勉強させる親の正しい対応

「勉強なんて意味ない」と反論する子どもを自ら勉強させる親の正しい対応
School Post編集室に寄せられた質問・お悩みの数々。その中から、多くの人が抱えているであろう質問に対して誠心誠意、回答してまいります。今回の「質問・悩み」は「子どもが『勉強なんて意味ない』といって聞かない」というもの。もし共感できましたら、周りの方でこのような悩みに頭を抱える知人・友人にも教えてあげてくださいね。
石井 知哉(いしい ともや)

執筆

石井 知哉(いしい ともや)

子どもが「勉強なんて意味ない」といって聞かない・・・:中2お母様(38)

【質問・お悩みの内容】
中2になる息子が全く勉強しません。私が促すと「勉強なんて意味ない!」と反論します。どうしたらいいでしょう・・?

【回答】

心中お察しします。こういう反論って、されたことのない親御さんは極めてレアでしょう。
お子さんの性格や発言の真意によって、ベストな対応方法は様々です。
しかし、1つだけ、避けるべきことがあります。それは「いいから黙って勉強しなさい!」というもの。

有無を言わさず勉強させる、という手法が通用するのは、小学生か、せいぜい中学1年生くらいまで。中2にもなれば、思春期を迎えて「自分なりの価値観」を抱き始めます。自立心や反抗心も芽生えてきますから、ただ「〜しなさい」と言われただけでは、おそらく聞かないでしょう。仮に聞いたとしても、それは「従うふり」をしているだけで、内心では逆らいますから、勉強に身が入りません。

ですから、「とにかく言われた通りにしろ」というアプローチではおそらく解決できないことでしょう。それでは、どのように対応したらよいのか?まずは、こう反論するお子さんの内心を考えてみることにしましょう。

なぜ「勉強は意味がない」と思っているか?

「勉強なんて意味ない!」と主張するお子さんの真意はどこにあるのでしょう?それによって、対応のしかたも当然変わってきます。ですから、まずはお子さんの考えを聴いて確認するところから始めましょう。
具体的には、次のように進めてみてください。

  • ステップ1:オウム返し

    はじめは、お子さんの言い分を受け入れる姿勢を示してください。「意味ないのかあ」「◯◯(お子さんの名前)は勉強なんて意味ないと思っているんだね」など、お子さんが言ったことをそのまま聴かせるように、ゆっくりと繰り返します。

    これにより、自分が何を発言したのか、お子さん自身が再認識します。同時に、「自分の言い分を親が聴いてくれようとしているんだ」と、安心して話せる心境を整えてあげます。

  • ステップ2:次に子どもの話を聴く

    お子さんの考えを掘り下げて聴き出していきます。「どうしてそう思うようになったの?」「どんなところが意味ないと思うの?」などと問いながら、お子さんが話すのを聴いてあげてください。

    このとき、気を付けて欲しいことは
    ・子どもの話を途中でさえぎったり否定したりせず、最後まで聴く。
    ・うなずいたり、あいづちを打ったりしながら、子どもが話しやすい雰囲気を作る。
    ・決して非難、糾弾しているような口調にならないようにする。
    の3点です。

    このようにして聴き出してみると、「勉強なんて意味ない!」という発言には
    ケース1:本心は別にある
    ケース2:心底そう思っている
    この2つに大別されるように思われます。

ケース1の「本心は別にある」場合は?

これは、心の中では「本当は勉強しなきゃいけない」ということはわかっているケースです。「勉強なんて意味ない!」という発言の真意は別のところにあります。「勉強なんてしなくていい」とまでは思っていません。(「できれば勉強はしたくないなあ」くらいには思っているかもしれませんが。)

なんとなくやる気が出ないなあ・・・
苦手な単元が理解できない・・・
そんな気分のときに、親から「勉強しなさい」と言われ、カチンときてつい反射的に出てしまう。それが「勉強なんて意味ないじゃん!」というセリフです。

こういう場合、ほとんどの場合、お子さんの内心の不安が表れていると考えた方が良さそうです。「実は学校の先生とうまくいっていない」「友人関係がこじれている」といった悩みを抱えていて、勉強どころではないのかもしれません。

そんな場合は、「勉強する“意味”」を語るよりも、お子さんが抱えている悩みを吐き出させてあげることが一番大切です。お子さんが「うちの親、自分のことをきちんと理解してくれているんだなあ」と実感できれば、そこから勉強へと気持ちを切り替えやすくなるでしょう。

ケース2の「心底そう思っている」場合は?

これは「勉強なんて意味ない!」と本心で思っている場合です。勉強の必要性をわかっていないわけです。この場合は、「なぜ勉強が必要なのか?」という“意味”を教えて、納得させる必要があります。

まずはこう問いかけてみてください。
勉強が意味ないと思うのはわかった。だから、勉強したくないってことだよね。じゃあ、中学校を卒業した後はどうやって生活していくの?」と。

ほとんどのお子さんが、「働いてお金を稼ぐ」と答えることでしょう。それ以外の道を選ぶにしても、現実問題として、生活するためにはそれを支える収入が必要です。親御さんがいつまでも面倒を見るわけにはいきません。先に生まれた者が先に死ぬのは自然の摂理ですから、親は子より先にこの世を去るのです。

だから、お子さんはいつか必ず、自分で収入を得るようにしなければ生きていけません。当然、収入を得るためには、何らかの職について働かなければなりません。そして、働くためには知識や技能が必要です

そうした知識や技能を得るために勉強しなければならないのです。つまり、勉強をするのは、「社会に出て生活する上で必要な力を身につけるため」です。最低限これだけは身につけておけば、社会に出て困ることはない。そのために義務教育があるわけです。

義務教育レベルの内容が頭に入っていなければ、ほとんどの職種において仕事を覚えるのに苦労することでしょう。雇う側からすれば、仕事を早く覚える人を採用したいわけです。採用人数には限りがありますから、能力が低いと職につくチャンスが減ります。能力を高めてチャンスをつかむために勉強が必要なのです。それが「勉強する“意味”」です。

抽象的な話ばかりでは説得力が乏しいかもしれません。もう少し具体的な話をしましょう。

主要5教科には、次のような目的があります。

  • 国語:日常生活で使う日本語を正しく読み、書き、話し、聴く。
  • 数学:基本的な計算をはじめ、論理的思考力を養う。
  • 理科:身のまわりの物質や現象の成り立ちを知り、科学的に考察する。
  • 社会:地理も歴史も公民も、世の中の仕組みを知る。
  • 英語:グローバル化が進み、日本国内に住んでいても必要となるコミュニケーションスキルを身につける。

実技4教科は、まさに“実学”。音楽、美術、保健・体育、技術・家庭など、いずれも実生活に直結します。ここで身につけたことがそのまま職業につながることもあるでしょう。

このように、中学校で勉強することは、頭と体を鍛えて実社会で生活するためのものです。もちろん、プロとしてやっていくには、高校や専門学校、大学などで学んで更にレベルを上げる必要があるわけですが。

すると、「興味・関心のある人だけ勉強すればいい」という反論が返ってくるでしょう。たしかに、それには一理あります。
しかし、中学校入学の段階で、関心のある分野がはっきりしている人がどれだけいるでしょう?
むしろ、中学校の授業を通じて興味を深め、そこから自分が将来進みたい道や、中学卒業後の進路を考えていくのが通例でしょう。もし、義務教育の段階から教科選択制になってしまうと、才能を伸ばすチャンスが失われます。
だから、個々の生徒の興味・関心のあり方とは無関係に、全教科が必修なのです。

「文字の読み書きと単純な計算だけできれば困らないんだから、中学校の内容なんて必要ない」という反論もよく聞かれます。なかなかに鋭いお子さんです。

しかし、こんな話を耳にしたことがあります。

中学生時代に「勉強なんて意味ない」と放り投げた人の話です。その後、この人は一念発起して公務員を目指すことにしたのだそうです。公務員になるためには採用試験に合格することが必要です。そこで、試験勉強を始めました。夢を叶えるために、毎日一生懸命勉強します。
しかし、小学校・中学校時代に勉強をおろそかにしてきたため、基礎学力が備わっていません
基礎学力がないため、同じことを理解するために人よりずっと時間がかかりますし、同じだけの時間をかけても他の人ほどには成果が出ません。努力しても努力しても、なかなか伸びない。「こんなに頑張っているのに、全然合格できる気がしない。このままでは夢が叶わない」という絶望感から自暴自棄になってしまったのでしょう。結局、その人は強盗を犯してしまったのだそうです。

義務教育で身につける基礎学力がないということが、いかに恐ろしいことかおわかり頂けたでしょうか。もしも、この人が中学校時代にしっかりと勉強していれば、違った結末になっていたはずです。

勉強をするのは、将来の選択の幅を広げるためでもあるのです。今は「こんな勉強なんか何の役に立つんだろう」と思っているかもしれません。しかし、たいていの場合、その答えが出るのは時間が経ってからなのです。後になって「あのときもっと勉強していれば良かった」と思っても、もう時間は戻ってきません。

だからこそ、「意味なんてない」と背を向けてはいけないのです。そもそも、勉強をしていないのに「勉強に意味なんてない」と言えるはずがないのです。食べたことのない物が「美味しい」か「美味しくない」かは、食べてみなければわかりません。同じように、「勉強することの“意味”」は、「勉強した人」にしかわからないのです。

「勉強なんて意味ない!」が許される特別な存在

例外的に勉強をしなくてもいい、特別な中学生がいます。それは、すでに「社会に出て生活する上で必要な力」が備わっている場合です。たとえば、スポーツや芸術(音楽や絵画など)など、勉強以外の分野で大きな“可能性”を持っているお子さんです。

「勉強なんて意味ない!」という発言は、「勉強なんかしなくても自分は社会で生きていける」という自信の表れなのかもしれません。そういう場合、お子さんとしては、「自分の得意分野をもっと伸ばしてそれで生活していきたいのに・・・」という心理もはたらくことでしょう。スポーツや芸術の分野で本気でプロとして活躍していくつもりなら、学校の勉強に乗り気でないことも充分に理解できます。

中学校を卒業してすぐにプロとして活躍できるだけの能力があるなら、勉強しなくても生きていけます。もっとも、プロになったらなったで、日々のトレーニングや練習といった「学校よりももっと厳しい勉強」が必要になるわけですが・・・。

生きている限りは一生勉強、ということですね。

石井 知哉(いしい ともや)

執筆

石井 知哉(いしい ともや)