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小野学園女子中高のホタルプロジェクト

2013.10.11

6年間を通して185の実験に取り組む理数教育に強い女子校として知られる、「小野学園女子中学・高等学校」(以下、小野学園)。東京都品川区という都心で、ホタルを自生させる取り組みを行っています。理科授業の一環として始まった本プロジェクトの歴史と狙いを、広報部の福永先生、比嘉先生に伺ってきました。果たしてホタルの自生は成功したのでしょうか??
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ホタルの自生は、理科授業の一環で始まった

自然と接する機会の少ない東京都で生活する生徒たち。 便利な暮らしの中でこそ、地球温暖化などの環境問題も考えていく必要があると考えた小野学園。 2008年から中学2年生の理科授業の一環で、環境問題をテーマに生物の自生に関する研究を始めました。

そこでスポットライトが当たったのが、都会のような人工的な環境下では自生が難しいとされるホタル。 「水にも空気にも気をつかう必要があるホタルが東京品川で育つことができたら、それは多様な生物が共生できる環境が作られたといえます」と福永先生。

広報部の比嘉先生(左)と福永先生(右)
取材に応じていただいた広報部の比嘉先生(左)と福永先生(右)

ホタルの自生研究は、東京農業大学とサイエンス・パートナーシップ・プログラム(http://www.jst.go.jp/cpse/spp/)を組み、教頭先生が知り合いから譲り受けたホタルを飼育するところから始まりました。 校舎の4階にホタル自生研究室を設置し、中学2年生の生徒が飼育します。

ホタル自生研究室
ホタル自生研究室

当初、生徒たちはプロジェクトの意図を理解していませんでしたが、「初めて飛んだときは、感動的だった」と当時中学2年生の担任だった福永先生は振り返ります。

室内でのホタル飼育が成功した後は、フィールドワーク。生徒たちは、東京農業大学の教授の協力を得て福島県鮫川村に行き、実際にホタルが自生している場所を体感して、それをレポートとして書き留めました。

国土交通大臣賞を受賞。生徒たちがデザインしたホタルの観察園

フィールドワークから戻ると生徒たちは、「どうすればホタルの自生を東京都品川区で実現できるか」という課題に沿って、ホタルが自生できる環境をデザインしました。 「デザインの課題は生徒の間で大きな盛り上がりを見せました」と福永先生。 そうして完成した自生環境のデザインは、「緑の環境デザイン賞」で2011年に国土交通大臣賞を受賞。生徒たちは取り組みの大きさを改めて実感したといいます。

生徒たちが作成したデザイン画
生徒たちが作成したデザイン画

ホタルプロジェクト開始から5年目の2012年、受賞したデザインをもとに造られたのが、「大井町自然再生観察園(以下、観察園)」。この観察園は生徒たちの調査活動の結果を反映させたもので、小野学園から徒歩10分ほどの距離にあります。

翌年の2013年には、実際にホタルの幼虫を観察園に放し、ついに都会でのホタル自生に乗り出しました。 「(幼虫が)鳥に食べられるのではないか、という不安はありました」と福永先生。 すべてが初めて尽くしの中、失敗も経験になると考えていたそうです。

ホタル幼虫の放流の様子
ホタル幼虫の放流の様子

しかし結果としては、数百匹ものホタルを孵(かえ)すことができました。 実際にフィールドワークを通してホタルが自生できる環境を体感し、その経験を基に取り組んだ結果がホタルの飛翔につながりました。 そこで、生徒の成果をみてもらおうと観察園を一般に公開し、地元住民を中心に約2,300人もの人々にホタルの幻想的な光を届けました。

大井町自然再生観察園でのホタル飛翔
大井町自然再生観察園でのホタル飛翔

生徒たちは、ホタルを幼虫から成虫に孵(かえ)した今でも、中学2年生の7月上旬の2日間に群馬県に行き、ホタルの調査活動を行っています。 活動には東京農業大学の教授も同行しており、ホタルが自生する場所に生存するほかの虫やホタルの生態、産卵に必要な環境などについて指導してもらっています。

小野学園が目指すゴールは、生命のサイクル

最終目標は、「大井町自然再生観察園」で生命のサイクルを確立させること。 幼虫を放して成虫にするのではなく、「大井町自然再生観察園」内で成虫が産卵し、幼虫が成虫になるというサイクルをつくることです。

「ほったらかしにしても、勝手に(ホタルが)飛ぶのがゴールです(笑)」と福永先生。

生命のサイクルが確立したら、それ以上は手を加えることはしません。 なぜならそれ以上は、もはや自然ではないからです。

体験型学習を通して、社会で役立つ能力を育成

生徒たちは毎週木曜日午後の1~2時間、当番制でホタルの世話を行います。 エサの量、水温、水質のチェックが主な仕事。

一般的に、「女性は虫が苦手」というイメージがあります。 ホタルの世話を嫌がる生徒はいないのでしょうか?と質問をすると、「一回、孵(かえ)ってしまえば、我が子のようなもの。虫は嫌いだろうけど、飛行中のホタルは生々しくないこともあって、嫌がる子はいません。ゲジゲジとかは嫌だと思いますけど」と比嘉先生は笑います。

小野学園では教科書の学びだけではなく、ホタルプロジェクトのように実際に「見て」「聞いて」「触って」学ぶ体験型の学習を重視しています。 多くの体験をしてきた人は、「こうすれば良い」「こうしたら良くない」ということがわかってくるといいます。 また都会で「ホタルを自生させる」といったような、明確な正解がない課題に取り組むことによって、仮説を立て、検証し、分析して、改善策を実行する、という能力を自然に身につけることができるそう。

会社に入っても、家庭に入っても、日々の生活では正解がないことの方が多いのですから、この能力は社会に出てからも必ず役に立つでしょう。

答えがないからといって、決して立ち止まることはしません。 実体験型の学習によって生徒を自立に導く小野学園の動きを今後も注目したいと思います。

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編集後記

まさか品川区で!?というのが第一印象です。しかもただの飼育活動ではなく「自生」。それは生物の環境を整える、ということだと思います。 しかもその環境は、生徒がデザインして実現させたというから更に驚きです。学校への取材後、その観察園も見させて頂きました。随所に取材時に聞いた工夫が見て取れて、考えられていることを改めて感じました。

今回取材した学校について

小野学園女子中学・高等学校

東京都品川区にある女子の中高一貫校で、高校からの募集も行う併設校。 「どっちもできる育成」を教育のねらいとしており、社会、家庭の両方で生きていくための教育を展開している。 また理数系の教育に力を入れており、生徒たちは多くの実験から体験的に学習していく。

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