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トキワ松学園中高の和菓子開発

トキワ松学園中高の和菓子開発
和菓子の老舗「亀屋万年堂」とコラボし、女子校生が和菓子開発に挑む授業があります。それを行うのは、トキワ松学園中学校・高等学校(以下、トキワ松学園)。生徒の満足度99%の本授業、アイディアの出し方の練習から始め、中間発表では一般の方に投票を求めます。しかしそこで一番人気を集めたアイディアが商品化されるのではないそう。では、商品化されるアイディアはどうやって選ばれるのか?その条件とは??

※本記事は、2014年03月時点での取材内容を基にしています

生徒が待ちわびる政治経済の授業とは?

高校2年生の週4時間ある政治経済の授業、その内の1時間に、生徒が待ちわびる授業があります。それは、自由が丘に本店を置く和菓子の老舗「亀屋万年堂」とのコラボレーション授業です。トキワ松学園の「地元に根差した企業と一緒に」という思いが通じ、亀屋万年堂から協力を得ることができました。この授業で生徒たちは、「女子高生が食べたくなる和菓子」をテーマにした商品開発に挑戦しています。

本授業を担当する菅原先生は、「普通の政経(政治経済)の授業をやると言うと、生徒から『なんでですか!?』と言われます」と笑います。

和菓子開発の第1歩はアイディア出し。夏休みには一人ひとつのアイディアを

授業で話し合う生徒たち
授業で話し合う生徒たち

この商品開発は2013年度から始まった挑戦です。生徒たちは1年をかけて、新しい和菓子を考えます。とはいえ、最初は右も左もわからない生徒たち。まずはアイディアを出す練習から始めます。

最初のテーマは「傘の使い方」。
菅原先生が「とにかく出せるだけ出そう」と呼びかけると、たくさんのアイディアが生徒たちから集まるそう。「杖にする」「視界をさえぎる」「武器にする」などといったものから「彼氏と入る」というような女子校生らしいものまで。

アイディアを出す楽しさを知った生徒たちが次に行うのは、市場調査の練習。自らの1日の行動をイメージし、「いつ」「どのような行動をとるか」を記録します。その記録から「お菓子を食べるタイミング」や「どういう心情・状況のときに食べたくなるか」などを考えていくのです。他にも全校生徒に対してアンケートを実施し、消費者ニーズの調査も行います。

こうしたアイディアを出すための事前準備をしたうえで、亀屋万年堂から「亀屋万年堂の概要」や「店舗の様子」「和菓子について」などを教えてもらいます。
さらに工場見学も行い、生徒たちは製造ラインや製造工程を実施で学ぶのです。その後、教育学者で創造開発の専門家でもある高橋誠先生に協力してもらい「アイディアの出し方」についての講義を受けて1学期を締めくくります。そして夏休みには、一人ひとりがそれぞれのアイディアを一枚の企画書にまとめる宿題が課されるのです。

菅原先生は生徒たちに「『女子高生が食べたくなる和菓子』というテーマにこだわりすぎる必要はないから、自分たちが良いと思ったアイディアを出そう」と伝えるといいます。これはアイディアを制限するのはよくないという考え方で、生徒たちの創造性を尊重しているからです。

一番人気でも商品化されない??商品化されるために必要な条件とは

2学期になり集まった企画書は生徒数と同じ86枚。
生徒たちは4~5人で1つの班を作り、おのおのが夏休み中に練りに練ったアイディアを持ち寄ります。「これをこうしよう」「もっとこうじゃないか」と考えを巡らし合い、班で1枚の企画書にまとめなおします。

「本や雑誌をよく読んでいる子がいいアイディアを多く出している気がしますね」と菅原先生。最近の流行をよく知っていたり、知識が多かったりと、いいアイディアを出す下地ができているのだそう。

先生は、生徒たちの自由な発想を大事にしたいという思いから、極力助言を行いません。菅原先生は、「時には(アドバイスを)言いたくなる時がありますよ」と苦笑い。葛藤がうかがえます。

文化祭が近づくと、生徒たちの知恵と情熱の凝縮された個性豊かな17枚の企画書は色とりどりのポスターへと姿を変えます。これらを学校のエントランスに掲示して、文化祭の来場者から投票してもらうのです。最後には人気順で集計されますので、生徒たちはドキドキです。

ポスター作りに熱中する生徒たち
ポスター作りに熱中する生徒たち
文化祭で掲示されたポスター
文化祭で掲示されたポスター

来場者からの反響は亀屋万年堂の担当者が驚くほどで、投票者の中から抽選で当たった人にプレゼントしていた亀屋万年堂の名物お菓子のナボナを追加で用意するほどの投票数だったといいます。(追加分は亀屋万年堂さんが無料で提供してくれたそう!)

この投票で、どのアイディアが一番人気かがわかりますが、設備やお店のコンセプトの観点から、一番人気のアイディアが商品化するわけではありません。「ポスターの出来も順位に影響します。順位は低くても、専門家の目にとまったアイディア企画もあります。亀屋万年堂の担当者の方も高橋先生も非常に協力的で、それぞれの班一つひとつにアドバイスもしっかりいただけて」と菅原先生は目を細めます。

文化祭が終わると、生徒たちは、もらったアドバイスをもとに企画書をさらにブラッシュアップします。そして、冬休み中に企画を3~5つに絞り、選ばれた企画が、3学期中の商品化を目指し磨かれていくのです。

「1つでも商品化できればいいのです。もし1つもできなくても、それはそれで勉強になります」と中里先生。

満足度99%の授業!生徒の成長度も高い取り組み

学校が生徒向けに行った授業に対するアンケートによると99%の生徒が満足していると結果がでました。「商品開発が楽しい」「0から作ることが初めての経験」「チームワークを活かすことが楽しい」など、理由は様々です。

授業開始当初と比べて、生徒たちに変化はありますか?と質問すると、「役割分担がしっかりできるようになり、経済的な感覚も身に付いてきていますね」と教えてくれました。

生徒たちはこの取り組みの中で、アイディアを生み出す際に「実現可能かどうか」というモノサシからも考えられるようになりました。それは実際に、亀屋万年堂から直接話が聞けたことと、工場見学をしたこと大きいといいます。製造ラインを実際目にすることによって、「どう作っているか」が具体的にイメージでき、何ができて何ができないかが判断できるようになるそう。

商品開発の結果がでるのは2014年。先生も驚くほど成長した生徒たち。
そう長くない将来に店頭に並ぶかもしれない女たちが手掛けた商品を楽しみにしています。

編集後記

キャリア教育というよりは職業体験(!?)実際に企業とのコラボレーションにより実現した商品開発の授業です。生徒たちの柔軟な発想が面白い!取材の中で実際に生徒たちが考え、作成した商品のポスターを見せてもらいましたが、どれも個性があってGoodでした!

この記事で紹介した学校はココ!

トキワ松学園中学校高等学校

 トキワ松学園中学校高等学校

東京都目黒区にある女子の中高一貫校で、高校からの募集も行う併設校。生徒同士のつながりを大事する校風で、学園全体の交流が盛んである。「グローバルな視野をもち、クリエイティブに問題解決をできる探求女子を育てる」を教育ビジョンに掲げる。